スカイマークの民事再生法申請は経営ミス!? 羽田空港に見る規制緩和の必要性
2015.01.30
国内3位の航空会社であるスカイマークは28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。他の新興航空会社が大手の傘下に入る中、スカイマークは独立路線を貫こうと孤軍奮闘したが、ついに力尽きた。
スカイマークは、1990年代、航空業界の規制緩和が進められる中で誕生した新興航空会社だ。同社が新規参入するまでは、航空輸送産業は日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、日本エアシステム(JAS)による事実上の独占状態が続いており、健全な競争下にあるとは言えなかった。
政府が航空事業への新規参入を規制
3社独占の時代は、飛行機の便数や運賃は、当時の運輸省主導で決められていた。滑走路の発着枠は路線ごとに大手3社に割り振られ、" お上"による規制によって企業の新規参入は事実上認められていなかった。
その後、2000年の改正航空法の施行をきっかけに規制緩和が大きく進み、スカイマークをはじめとする多くの新興航空会社の参入が実現。企業間競争が促進され、運賃の値下げも行われた。
ただ、大手も次々と運賃の値下げに踏み込んだことにより、格安運賃を売りにしていたスカイマークの優位性は失われた。同社は業績悪化を挽回しようと、エアバス社から大型航空機を6機購入したが、円安による航空機のリース料、燃料費の負担増や、LCCとの激しい価格競争に敗れたことなどが原因となり、経営が急激に悪化。結局、全機の購入をキャンセルせざるを得なくなり、エアバス社に請求された約830億円に及ぶ違約金により、終止符を打たれた形になった。
羽田の発着枠はアトランタの半分以下
スカイマークの経営破綻の原因は同社の経営上の判断ミスによる部分が大きいだろう。ただ、航空輸送業界を縛り上げる政府の法規制にも問題がある。
羽田空港の国際線の発着枠は、1枠につき年間100億円の売上高が見込めると言われており、一度手に入れれば撤退しない限り、毎年10億以上の営業利益を得ることができるという。いわゆるドル箱路線だ。ただ、羽田をはじめとする乗り入れ希望が多い空港は、国土交通省が5年ごとに、限られた発着枠の調整を行っており、健全な競争市場が形成されているとは言えない。
加えて、発着枠そのものも滑走路の整備などに応じて国交省が決めており、世界の大都市に及ばない。2013年の羽田空港の発着枠は約40万回で、世界1位の発着回数を誇るアメリカのアトランタ空港の半分以下だ。発着枠がなかなか増えない背景には、滑走路の処理能力の限界を迎えつつあることも指摘されているが、安全性や騒音の観点などから都心上空での厳しい高度制限が課され、飛行経路の見直しがなかなか進まないことなど規制によるものも多い。
航空輸送業界の規制緩和は少しずつ進んでいるものの、まだ十分ではない。新規参入を促し、市場の自由を担保するためにも、政府は発着枠を配分するような縮み思考ではなく、発着枠自体を増やすような発展思考へと考え方を転換する必要がある。大手2社の2強体制が強まれば、運賃が値上げされるなど、昔の状態に戻りかねない。政府が規制緩和を大きく進めることに伴って、輸送革命を起こす新たな風雲児の到来を待ち望みたいものだ。(冨)
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