「世界の警察官」を降りたアメリカ(Webバージョン) - 編集長コラム
2013.10.11
オバマ大統領は9月10日、戦後の米大統領として初めて「アメリカは世界の警察官ではない」と表明。神の正義を実現しようとするアメリカの使命を放棄したのか? 写真:代表撮影/AP/アフロ
2013年11月号記事
「世界の警察官」を降りたアメリカ(Webバージョン)
(2013年10月10日 Webバージョンにて再投稿)
オバマ米大統領が正面切って、「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言した。 シリア内戦への軍事介入の見送りを表明した今年9月の演説で飛び出した。 戦後のアメリカ大統領としては初めてで、歴史的な“事件"だ。
確かにオバマ大統領は、外国への武力介入を徹底してなくそうとしている。イラクにいた米軍をすでに引き揚げ、アフガン駐留軍は来年に完全撤退させたい考えだ。シリアはもちろん、リビアやマリの内戦でも及び腰の関与に終わり、オバマ政権のある高官は「背後から導く(leading from behind)」という“迷言"を残した。
幸福の科学の大川隆法総裁は、オバマ氏が大統領に就任する前の2008年11月、同氏の守護霊の霊言を収録している。その中で守護霊は「アメリカは世界の警察になるべきではありません」と述べ、地上に生きる本人と同じセリフを語った。
守護霊は潜在意識の中にある「本心」なので、オバマ大統領はその導き通りに行動していることになる。
「神が与えた使命」をウィルソンが宣言
アメリカの「世界の警察官」としての役割は、第一次大戦のウィルソン、第二次大戦のF・ルーズベルト両大統領によって確立した。
第一次大戦までアメリカは、孤立主義の一辺倒だった。その背景には、アメリカ建国の父たちの理想がある。彼らは、 「建国の理念である、個人の自由や民主主義の価値観を世界に広める使命が神から与えられている」 と確信していた。アメリカ独立宣言を起草し、第3代大統領となったジェファーソンは、「アメリカは人類すべてのために行動している」と語っていた。
この思想が、アメリカ人が強く意識する「例外主義」「特別さ」(exceptionalism)の出発点だ。それを実現するために、権謀術数にまみれたヨーロッパの外交や紛争とは一線を画し、"純粋性"を保たなければならなかった。初代大統領ワシントンは、辞任にあたって発表した文書でこう語っている。
「なぜ自立を捨て、他国に依存しないといけないのか? ヨーロッパの一部と同盟を結び、私たちの運命を他国にゆだねることによって、私たちの平和と繁栄がヨーロッパの野心や競争、利得、気まぐれ、急変に巻き込まれないといけないのか?」
ワシントンは、外国に干渉しないし、されもしないという孤立主義を定式化した。これが建国の父たちの「遺言」であり、アメリカ外交の根幹だった。
ところが、第一次大戦で第28代大統領ウィルソンは、ワシントンが腰を抜かして驚くような大転換を打ち出した。ウィルソンは「アメリカの理想を世界に広げるために、海外の紛争に積極的に関与しなければならない」と論理を180度逆転させたのだ。これを実行しようとすれば、アメリカは世界のあらゆる紛争に介入しなければならなくなる。
第一次大戦後のパリ講和会議でウィルソンは、世界政府に近い国際連盟を提案し、 「偉大な民主主義世界を築くことは、神が私に与えた使命である以上、私には選択の余地はない。ただ神の意志に従うのみだ」 とうたい上げた。
ウィルソンは牧師の息子で、暇さえあれば聖書をひもとくタイプ。講和会議に同席したフランスのクレマンソー首相は、ウィルソンが提案した14カ条の平和原則について、「アメリカは神の与えたもうたもの(十戒)に、さらに4つを付け加えようとしている」と揶揄した。そればかりかクレマンソー首相は「ウィルソンは、本気でキリストと話していると思っている」と、ウィルソンを「イエスの弟子」であるかのように観察していた。
ちなみに、今年7月に収録されたイエス・キリストの霊言でウィルソンの過去世が明らかにされている(大川隆法著『イエス・キリストに聞く「同性婚問題」』)。それによると、イエスの十二使徒ヤコブとヨハネ兄弟の父ゼベダイだったという。
イエスの激しい気性を受け継ぐような ウィルソン大統領が訴えた「アメリカが世界規模での警察官の役割を果たす」というビジョンは、ウィルソン主義と呼ばれ、その後のアメリカ外交の理念となった。
第二次大戦を通じ「宣教師」兼「警察官」に
しかし、ウィルソンの提案はその時点では、「警察官」としての行動まで伴わない「宣教師」にとどまるものとなった。孤立主義者が大半のアメリカ議会がノーを突き付けたためだ。「地球のどこかで紛争が起これば、米兵が警察代わりに飛び出して行かざるを得ない」として、孤立主義に逆戻りした。
その結果、第一次大戦後は、世界一の経済力と軍事力を持つアメリカが、再び海外の紛争に関わらなくなったために、ヒトラーのドイツ・ナチス軍の台頭を招いた。
アメリカを「警察官」へと押し出したのは、“内向き"の国民をだましだまし第二次大戦参戦へと導いたF・ルーズベルトの統率力だった。
ナチス軍は、オーストリアやチェコスロバキアなどを次々と併合し、フランスも占領。ルーズベルトのアメリカは、イギリス陥落ぎりぎりのところで救援に入り、ソ連とも手を組んで連合国に勝利をもたらした。 ルーズベルトは、ウィルソンの唱えた理念を行動原理にまで落とし込み、終戦時にはアメリカを世界の超大国に押し上げた。
戦後のアメリカはソ連の共産主義に対する防波堤となり、朝鮮戦争、ベトナム戦争を戦った。湾岸戦争、イラク戦争なども、ウィルソンの理念と孤立主義とを行ったり来たりしながら戦い続けた。 これらの戦いはどれも、自由と民主主義を広げる「宣教師」であり「警察官」としての行動だった。
アメリカの「例外主義」は戦後、自由と民主主義を広げる特別な使命を実行するためには、軍事力を行使するなど少々乱暴なことをしても構わないという形で発展した。それが世界38カ国の700以上の基地となって展開している。
オバマは欧米文明の終わりを目指す?
オバマ大統領は、ウィルソン、ルーズベルト以来の伝統を断ち切ろうとしているように見える。いや、建国の父たちが信じた「特別な使命」をも消し去ろうとしている。
オバマ氏は「アメリカは特別(exceptional)」と言いつつも、「アメリカの例外主義があるなら、イギリスやギリシャのそれもある」とも主張したことがある。他国との関係はアメリカが一方的に保護する関係ではなく、「対等なパートナーシップを求める」とも語っている。
オバマ氏は、イスラム世界との確執や国内の人種差別問題などアメリカの負の面を謝罪するような発言もしている。
「アメリカはイスラムに対し、間違いを犯してきた。アメリカは完璧ではない」
「アメリカは国家として奴隷制や人種差別の遺物と戦っている」
これらの発言は、オバマ氏の本音は「特別ではない」点にあることを示している。
さらに言えば、オバマ大統領が目指すものは、「反植民地主義」にあるようだ。2012年にオバマ氏の子供時代からの思想形成にスポットライトを当てたドキュメンタリー映画「2016年=オバマのアメリカ」が公開された。この中でオバマ氏は、「欧米諸国がアフリカやアジアを支配し、搾取してきた500年間の白人優位の歴史を逆転させる思想の持ち主」として描かれている。
共和党を支持する政治学者が監督しているため、割り引いて考える必要があるが、少なからずオバマ氏の「本質」をとらえているようだ。オバマ氏は、シカゴの貧民街で働いていた時代から黒人キリスト教会のジェレマイア・ライト牧師に師事し、信仰上の指導を受けた。ライト牧師は、人種差別と帝国主義のアメリカに対し「呪いあれ」と説法する過激活動家でもある。
「アメリカは世界の警察官ではない」という言葉の真の意味は、キリスト教文明による非キリスト教圏に対する侵略・虐殺・収奪といった「罪」を清算すべきだという点にあるのかもしれない。
幸福の科学のリーディングで、それがよりはっきりする。オバマ大統領の過去世は、15~16世紀のアステカの王モンテスマ2世であることが明らかになっている(大川隆法著『2012年人類に終末は来るのか?』)。スペインの侵略を受け、国が滅んでしまった時のアステカ最後の王だ。その他には白人に滅ぼされたインディアンの酋長などの転生もある。オバマ氏の生まれ変わりの歴史は、キリスト教文明と戦い、敗れた悲劇の人生が多い。
オバマ氏の過去世、モンテスマ2世の霊言は2011年5月に収録されており、こう語っていた。
「白人は数百年にわたって、人種差別と優越感の下に、さまざまな悪業を積み重ねてきた。この間、アフリカ、アジア、中南米の人々は、差別と迫害と虐殺でそうとうな苦しみを得ているが、彼らには十分な『カルマ返し』が行われていない。だから、私がそれを成就する」
「私は、白人文明の最期をつくる」
2020年頃まで世界は大混乱
オバマ氏は、アメリカ国内で多数派になろうとしているヒスパニックや黒人による後押しを受け、 アメリカを「宣教師」や「警察官」の任から引きずり降ろそうとしている ようだ。
民主・共和両党の反目もあるが、オバマ氏が富裕層増税や福祉予算拡大にこだわり、国防費を毎年1000億ドル(約10兆円)規模で強制削減する事態を招いている。今年秋の予算不成立やデフォルト危機は、共和党保守派が悪役視されているが、もともとはオバマ氏の福祉国家化のプランが発端だ。
イランの核開発問題では、アメリカの軍事行動を極力避けている。ロウハニ大統領当選後、オバマ氏のほうから書簡を送り、イランが望む制裁解除の道を開こうとしている。
中国には「2020年には台湾を併合し、2030年には6隻の空母を持ち、2040年には西太平洋から米軍を追い出す」という構想があるとされる。そのために20数年にわたって軍拡を続け、軍事費を7倍以上に増やした。そんな中国にも、「核大国」の道を突き進む北朝鮮に対しても、話し合い最優先で、とにかく穏便に済ませようとしている。シリアの内戦やイランの核開発問題など中東にかかり切りで、外交・軍事の軸足をアジアへ移すリバランス(再均衡)政策は、雲散霧消しつつある。
オバマ氏がつくり出すこうした「力の空白」は、大英帝国が凋落するなかヒトラーのドイツが席巻した1930年代のヨーロッパに似ている。 ドイツ・ナチス軍が四方八方に攻め入り、それをどの国も止めることができなかった。今の時代のナチスは、中国であり、北朝鮮である可能性が高い。イランも出方によっては、中東で大戦争を起こし得る。
オバマ氏の任期は2016年まである。残る3年間、世界はそんな大混乱を耐えなければならない。
2017年に就任する次期大統領が「強い大統領」となることを期待したい。それでも、しばらくはオバマ氏の後始末に追われ、アメリカの復活はそこから2、3年はかかることだろう。 2020年ぐらいまで日本にとっても世界にとっても耐え忍びの時期だ。
日本が神の正義の下に戦う
日本はこの2020年頃まで、どう生き抜いていけばいいのか。
アメリカが「特別」ではなくなり、「自由や民主主義を世界に広める使命」を一時的であれ放棄するなら、日本が今後それを担うしかない。
アメリカ独立宣言は、「すべての人間は平等につくられ、創造主によって、生存、自由および幸福追求を含む不可侵の権利を与えられている」とうたう。これがアメリカの建国理念の根本であり、アメリカはそれを実現するために孤立主義になったり、世界で実現するためにウィルソン主義に転換したりした。そして、同じ思想が日本国憲法にも受け継がれている。日本国憲法13条に規定される「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」がその象徴。これは、敗戦国の武装を解除した第9条の規定などよりもずっと上位にある普遍的な概念だ。
こうした思想の中に、「神の正義」がはっきりと現れている。アメリカが一歩退くなら、日本こそが「神の正義の下に悪と戦い、より良い世界をつくる使命がある」と宣言すべき だ。そして、日本も神の正義を実現する力となるべきだろう。
ナチスに立ち向かったイギリスの首相チャーチルは、「ヒトラーは奈落の底から這い出した悪魔だ」と断言した。そのうえで「今度の戦争は人間の権利と独裁者の欲望との戦いである。一切の妥協はあり得ない」と宣言し、実際に独裁者を打ち倒した。日本にもそのぐらいの気迫が要る。
「日本にこそ正義あり」というぐらいの自負が要る
自国民を10万人も殺して平然としているシリアのアサド大統領は、もはや悪魔の側に立っている。シリアの化学兵器の廃棄について米露がこのほど合意したが、化学兵器ばかりを目の敵にするオバマ氏は、通常兵器ならば国民を大量殺戮してもいいという“支持"をアサド氏に与えたようなものだ。アメリカ国民に生命、自由、幸福の追求の権利を与えた神が悪魔を許容するとでも言うのだろうか。
中国や北朝鮮でも、国民の命が鴻毛より軽く扱われ、神から与えられた権利が踏みにじられている。13億人以上の人たちが、信教の自由、言論・表現の自由がない状態に置かれ、それに反した行動をとれば、生命の危険にさらされる。アメリカが今、動かないのであれば、日本に、神の正義に反する隣国の圧政と戦う義務がある。
かつて日本は、アジア・アフリカの人々を苦しめた白人優位の植民地主義と戦い、たたき潰した。
それ以前には、日本はパリ講和会議で「人種差別撤廃」の国際連盟規約案を提案した。その内容は、国内や支配領域で人種・国籍の違いによって差別しないことを加盟国に求める先進的なものだった。この提案に対する評決では、16人中、日本や中国、フランスなどの代表11人が賛成を表明したが、反対に回ったアメリカ、イギリスが画策し、議長のウィルソン米大統領が突然「不成立」を宣言した。それまでの評決はすべて多数決だったのに、ウィルソンが「重要な案件なので全会一致を必要とする」と“屁理屈"を持ち出したためだ。
つまり、人種差別撤廃の理想を葬り去ったのは、「神が与えた使命」を自覚するウィルソンだったのだ。であるならば、 「神の正義は日本にあり」というぐらいの自負を持っても構わないだろう。
オバマ大統領が「アメリカは世界の警察官ではない」と表明した以上、「アメリカに守ってもらおう」という依存心を持つ政治家は日本にもう必要ない。 ウィルソンのように神の正義とは何かを語り、チャーチルのように悪に立ち向かう真の指導者が求められている。
(綾織次郎)
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