北朝鮮による拉致事件を風化させるな 舞台「めぐみへの誓い」が上演中

2013.09.13

北朝鮮による拉致事件を描いた劇団夜想会の舞台「めぐみへの誓い―第二章・奪還―」が、10日から東京・六本木の俳優座劇場で上演されている。

拉致された横田めぐみさんの父・滋さんをはじめ、拉致被害者家族などへの取材をもとに、拉致の実態や北朝鮮での拉致被害者の生活、救出を求めて活動する家族の様子などが描かれる。事件前の幸せな家族の情景や、2002年の平壌での日朝首脳会談のときの期待と失望など、家族の心情が掘り下げられており、ニュースで見る拉致事件とは違った印象が心に残る作品だ。

1970年代から1980年代にかけて多数の日本人が失踪した拉致事件に対し、北朝鮮は関与を否定してきたが、2002年、平壌で行われた日朝首脳会談で日本人の拉致を認め、謝罪し、再発の防止を約束した。

しかし、日本政府が認定している拉致被害者17人に対し、北朝鮮政府側が認めているのはこのうち13人。5人が日本に帰国しているが、残り12人については「8人死亡、4人は入境せず」としている。また、死亡したとされる8人についても、死亡日時が一貫しなかったり、遺骨のDNA鑑定をしたところ別人のものと判明するなど、北朝鮮側の説明には問題が多い。

日本政府は、「我が国の国家主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、この問題の解決なくして日朝の国交正常化はあり得ない」として、すべての拉致被害者の帰国を目指しているものの、2002年の5人の帰国以降、一人も帰ってきていない。

劇団夜想会を主宰し、脚本・演出をつとめる野伏翔氏は、「拉致問題は現在進行形の事件。拉致被害者は今も日本に帰れず、家族の苦しみも続いている。演劇というかたちで見ることで、テレビなどでは知ることができない北朝鮮という隣国の現実を知ってほしい。また、被害者のご家族も高齢になってきており、今すぐにでも解決しなければいけないのに、2002年以降、11年間なにも進展していない。このまま風化させてしまってはいけない」と、今回の上演の意義について語った。

国民の生命と安全を守ることは、主権国家として当然の責務だ。それが侵され、犯人が分かっているにも関わらず、未だ解決できていない現状を重く受け止め、改めて問い直す機会としたい。(紘)

舞台「めぐみへの誓い」の公演は15日まで。

問い合わせは、電話03-3208-8051または、下記リンクをご参考ください。

http://yasokai.world.coocan.jp/mail.html

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