釈量子の宗教立国への道 [第18回] ─ 行き過ぎた地方分権は国を脅かす
2025.10.29
2025年12月号記事
第18回
釈量子の宗教立国への道
幸福実現党党首が、大川隆法・党総裁による「新・日本国憲法 試案」の論点を紹介する。
幸福実現党 党首
釈 量子
(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/
行き過ぎた地方分権は国を脅かす
第十三条
新・日本国憲法 試案〔第十三条〕
地方自治は尊重するが、
国家への責務を
忘れてはならない。
憲法試案〔第十三条〕は、「地方自治」についてです。
政治思想家トクヴィルは「地方自治は自由の小学校」と語っています。地方政治は、一般に考えられている行政分担や中央権力の強大化をけん制する機能のみならず、住民が自ら政治に参加し、神仏の願われる政治の理念を、地域で具体化していく大切な使命があることが分かります。
全国の地方議会で現在、幸福実現党の議員が活躍していますが、理想の国造りに向けた重要な一角を担っているのだと、つくづく実感します。
大川総裁も「地方で判断すべきことについて(中略)現場に近いところ、現場が分かっているところで判断するのが正しいので、『中央政府から現場に権限を委譲する』ということについては賛成です」と語っています(*1)。
(*1)《大川隆法政治講演集2009第5巻》『批判に屈しない心』(幸福実現党刊)
阪神大震災の教訓
沖縄問題の危険性
一方、今の世相を見るにつけて重要なのは、憲法試案後段の「国家への責務を忘れてはならない」という考え方です。
例えば現在、日本維新の会が「副首都構想」を掲げていますが、その下敷きになっているとされる「大阪都構想」について、大川総裁は、「『今、中央政府を弱らせることが、日本にとって利益があるかどうか』という点では、問題がある」と指摘しています(*2)。その先に想定されているという「道州制」についても、「この狭い国をこれ以上分割して、いろいろな役所が増えたりするようなことを、望ましいとは思っていません。(中略)国家としての迅速な判断が求められるものに対しては、一定の方向で、その判断を認めなければいけないと思うのです」と語られています(*3)。
1995年に阪神・淡路大震災があった際、左翼寄りだった兵庫県知事の自衛隊への出動要請が遅れたために、犠牲者を増やすことになったという批判も出ました。
大きな規模で国民の生命や安全が脅かされる事態に際しては、やはり国家レベルの迅速な判断に従うことが重要だと考えさせられます。
危機管理という観点では、沖縄問題もあります。先の大戦で県民の4分の1が亡くなったことなど、アメリカへのぬぐえぬ嫌悪感もあって「基地の負担軽減」が課題となってきました。"オール沖縄"を称する玉城デニー県知事も、辺野古基地への移設に強く反対し続けています。
しかし、自衛隊の戦力だけではこの国を護れないのは明白であり、戦略的要衝に位置する沖縄の米軍基地はアジアの安全保障の要です。一地方自治体の判断で全体が振り回される状況は避けるべきです。
(*2)『沖縄の論理は正しいのか?』(幸福の科学出版)
(*3)『新・日本国憲法試案』(幸福の科学出版)
必要なのは国を強める地方自治
こうした行き過ぎた地方分権論の背後にいるのが学者です。憲法学者の中には、「憲法95条の住民投票」を振りかざし、沖縄の住民の同意を得られなければ、辺野古基地移設は違憲だと主張している人もいます。しかしこのロジックを使えば、原発・自衛隊基地・核施設・高速道路・ダムなど、特定の地域に重大な負担や危険をもたらす国の事業全般を地方がことごとく止められることになってしまいます。これでは国防などに重大な危険が生じかねません。
中国の脅威が台湾、沖縄へ確実に迫るなか、来年9月の知事選の動向は非常に懸念されていますが、「国家としての大きな外交戦略」は「沖縄県知事の権限を超えている部分がある」のです(*2)。これが理解できなければ、日本はおろかアジアの自由が死に瀕してしまいます。
このような地方分権推進の流れは、マルクス主義的な「大企業反対」という考えと似ており、「よく言ってリベラリズム、悪く言えば、左翼思想が現実化したもの」であると、大川総裁は指摘しています(*4)。
結局、「国力を弱める地方自治」は間違いであり、あくまで求めるべきは「国全体の総力を高めるための地方自治強化」であることを、忘れてはなりません。
(*4)『政治革命家・大川隆法』(幸福の科学出版)
日本維新の会は、地域政党である大阪維新の会を母体とする(写真は大阪府庁舎)。
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