映画「呪い返し師─塩子誕生」もう一つの観方 ヒーロー映画に描かれた「煩悩」 ─スパイダーマンが戦った闇の正体とは─

2022.10.17

映画「呪い返し師─塩子誕生」とスパイダーマン。画像:Alexander Tolstykh / Shutterstock.com

新たなヒーロー像を描いた映画「呪い返し師─塩子誕生」が現在、全国の映画館で上映されている。

作品では、現代にあふれる「呪い」の諸相がありありと描かれる。

まず、「嫉妬」。さらに、仏教で「煩悩」として戒められる「貪(とん)」「瞋(じん)」「癡(ち)」の「心の三毒」。最後に、「慢(まん)」といううぬぼれが、どのように人生を狂わせ、社会を混乱させるか、ということがよく分かる。

ちなみに、仏教では、「貪」「瞋」「癡」「慢」のほか、疑いを意味する「疑(ぎ)」と、間違った見解の「悪見(あっけん)」を加えて、「六大煩悩」とする。

呪いとは【特別映像】|映画『呪い返し師─塩子誕生』2022年10月7日(金)公開!

スパイダーマンシリーズに見る「煩悩」と「憑依」

ヒーロームービーでは、戦闘シーンの激しさを売りにするものも多いが、「呪い返し師」のように、人間の内面を中心に迫る作品は珍しい。

近年の映画の中で、あえてそれに近い試みを挙げるとすれば、リバティ本誌11月号の連載「新 過去世物語 人は生まれ変わる」の「『呪い』の巨匠サム・ライミは江戸時代に生まれていた」で取り上げた「スパイダーマン」シリーズかもしれない。

上記の本誌連載では、同シリーズの敵役のほか、主人公のピーター・パーカーが心を揺らした時に、邪(よこしま)なものに憑依されるシーンが描かれていることに着目したが、本欄では、この部分をさらに掘り下げてみたい。

「スパイダーマン」シリーズをよく観ていくと、この作品では、仏教でいう「煩悩」にあたるものが描かれている。本誌の過去世物語では、このシリーズには「爽快なスーパーヒーロー映画」という装いに隠された、"憑依もの"としての実像があることを指摘した。

同シリーズでは、その憑依のきっかけとなるのが「貪・瞋・癡」であり、さらに「慢」「疑」「悪見」を加えた煩悩であることが描かれているように見える。それはどのように描かれているのだろうか。以下、ネタバレあり。

経営者が危機の中で焦りや怒りに囚われていく──スパイダーマン(2002年公開)

主人公ピーターの親友であるハリー・オズボーンの父親ノーマン・オズボーンは、自分の会社が軍から融資を打ち切られそうになり、焦りにとらわれ、開発中の未完成の身体増強薬を自分の身体に投与する。その有効性を証明しようと試みたのだ。

彼はその後、業績が回復したにもかかわらず、取締役会で解雇されてしまい、激しい怒り(瞋)に我を失い、軍事用のスーツを身にまとい、薬の影響で生まれた別人格、「グリーン・ゴブリン」となって悪事に手を染める。

彼は本来、優しい人物であったが、「巨大な力で世界を支配したい」という思いに負け、薬の副作用で生まれたもう一つの「凶暴な人格」に支配されてゆく。それは、足ることを知らない欲望(貪)の表れにも見える。この作品では、貪と瞋の両方が描かれていると言えそうだ。

「巨大な力を手にしたい」という欲に支配された科学者──スパイダーマン2(2004年公開)

善良な科学者が、人工知能を搭載したロボットアームを用いて核融合の公開研究実験を試みる。巨大なエネルギーを多くの人々のために役立てようとした実験ではあったが失敗し、彼はロボットアームに搭載された人工知能に精神を支配されてしまう。

実験前に、人工知能に心を支配される危険性について記者に指摘されていたのだが、それを強行した科学者の心の中にはうぬぼれ(慢)があった。また、科学万能主義という意味での、間違った見解(邪見)もあっただろう。

人工知能に心を支配され、元の人格を失った後、彼は再実験の資金を得るために銀行強盗に手を染める。それ以降、堰を切ったように「巨大な力を手にしたい」という欲望(貪)に支配されてゆく。

憑依や悪霊の存在を想起させる謎の生命体──スパイダーマン3(2007年公開)

祖父を殺した真犯人を知らされ、憎しみに駆られた主人公ピーターは、謎の液状生命体に寄生され、「ブラック・スパイダーマン」となってしまう。彼は、父が殺される悪夢を見ているその瞬間に憑依され、性格が一変する。つまり、「瞋」によって、悪なる存在と「波長同通」してしまったのだ。また、この謎の生命体が「攻撃性」を倍加するのは、まさに悪霊とそっくりである。

ピーターは、祖父を殺した犯人に復讐した後、スパイダーマンを敵視する記者をやりこめ、失職させてしまう。ある日、ピーターが、後悔の念を感じて教会に行くと、そこでは、記者が「スパイダーマンを殺してください」と祈っていた。すると、謎の生命体は、その「呪い」に惹かれるように、ピーターから記者へと宿り先を変えていく。

また、この作品では、ピーターの親友のハリー・オズボーンが、スパイダーマンが父を殺したと誤解して怒り(瞋)、父親のノーマン・オズボーンと同じくゴブリンになってしまうが、いずれも、「瞋」が寄生(憑依)の引き金になっている。

煩悩に囚われた時、人は悪の道へと転落していく

「スパイダーマン」シリーズでは、「偉大なる力には、偉大なる責任が伴う」というテーマの下、責任を果たそうとするヒーローと、煩悩が肥大化して悪なる存在と同通した敵役たちとの戦いが繰り広げられる。自分の心をコントロールできず、心に隙ができた時──つまり、煩悩に囚われた時──に、人は悪の道へと転落し、邪な力に支配されてしまう。

ある意味では、仏教が求めた「正しき心」と、仏教が戒めた「煩悩」が描かれていると言ってもよいだろう。

幸福の科学の霊査によれば、スパイダーマン三部作の監督を務めたサム・ライミの過去世にあたる人物は、「心を許せば妖魔となるが、心を引き締め、正せば悟りに至る」ということを繰り返し作品で訴えた、日本の江戸期の文学者である(詳細は本誌記事)。

また、仏教にいう「煩悩」がどのように「憑依」を引き起こすのかについては、公開中の映画「呪い返し師─塩子誕生」でありありと描かれている。さらなる真実を求める方は、ぜひ映画館に足を運んでいただきたい。

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タグ: 煩悩  ヒーロー  呪い  塩子誕生  憑依  スパイダーマン  呪い返し師  サム・ライミ 

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