民族派プーチンvs.改革派メドベージェフの対決の行方

2011.05.17

メドベージェフ大統領、プーチン首相の「双頭体制」が続くロシアでは、今年12月の下院選と来年3月の大統領選に向けて、政界での駆け引きが活発になってきている。12日には、プーチン首相が、与党の統一ロシアやその他の社会団体を軸とした国民運動「全ロシア国民戦線」を設立し、共同して下院選を戦うと宣言した。

首相の権力掌握の動きは、路線対立もささやかれるメドベージェフ大統領への、事実上の牽制とも見られるが、12日付の米紙クリスチャン・サイエンス・モニターでは、ヘリテージ財団上級研究員のアリエル・コーエン氏が、「双頭」の思想的な対立について紹介している。

  • 民主主義と距離を置くプーチン首相と、自由主義的で改革派のメドベージェフ大統領との路線対立は、150年にわたって続く「西洋派(Westernizer)」と「スラブ派(Slavophiles)」との対立の図式でもある。
  • メドベージェフ大統領の思想的な後援者がロシアの民主化改革を主張する一方で、西欧から距離を置き、帝国やオーソドックス教会といった伝統を軸としたロシアをつくるべきだと主張する知識人がプーチン大統領に影響を与えている。
  • プーチン氏の最近の議会へのレポートでは「弱い者は倒される」と言ったスターリンと共鳴する響きが見られる。また友人で映画監督のニキタ・ニハルコフ氏は、文化的なアプローチで、欧州同様に拡大中の移民排斥を主張するグループを取り込もうとしている。プーチン氏とニハルコフ氏は、民族主義的な層をうまく取り込むとともに、メドベージェフ氏らの改革派を退けようとしている。
  • もし独裁的な政権が次に生まれるなら、「リセット」の生んだ米ロ関係のささやかな改善も政策変更が避けられない。アメリカ政府は、ロシアの反対派弾圧や汚職などについて警告を発するべきである。

大統領選がどうなるのかはまだ予想できないが、プーチン氏主導による独裁強化と民族主義の高まりによって、対外的により強気のロシアが生まれる可能性は排除できない。中国の軍拡への対抗を考えれば、日本は経済協力などでロシアとの関係を強化する必要があるが、その前にまず、北方四島にロシア要人が入り放題になっている国防を何とかしなければならないだろう。

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