釈量子の志士奮迅 [第110回] - COP26が閉幕 CO2ゼロ全体主義から国益を護れ

2021.11.29

2022年1月号記事

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅

第110回

幸福実現党 党首

釈 量子

(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/

COP26が閉幕

CO2ゼロ全体主義から国益を護れ


イギリスで地球温暖化防止のための枠組みを議論する国際会議「COP26」が開かれ、石炭火力発電の「段階的削減」に向けて努力することなどを盛り込んだ文書を採択して幕を閉じました。

議長国であるイギリスは、槍玉に上げられている「石炭」と「気温上昇1.5度抑制」に言及できたことを自国の成果として強調するでしょう。一方で、中国とインドは「段階的廃止」という文言を後退させて実質的な義務的事項を排除しましたが、これによって双方の交渉官は自国に成果を持ち帰ることができるわけです。参加国が暗黙の了解でダメージを最小限にし合っており、世界は非常にしたたかです。

本当なら日本は、神奈川県の磯子火力発電所をはじめ、世界一クリーンで高効率な技術を持っているのですから、これこそ世界のベストソリューションだと売り込むことも可能なはず。それなのに日本のマスコミやNGOなどは「COP26で火力発電の廃止を合意できた」かのようにお祭り騒ぎをしています。

再エネ依存で深刻な電力不足と国民負担

問題はこれからです。実質的に日本が何も義務を負ってもいないのに、「やらなければ国際法違反」のような印象操作がますます横行することでしょう。

すでにCOPに先立つ10月、日本政府は「第6次エネルギー基本計画」を閣議決定し、再生可能エネルギーを「最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組む」ことを打ち出しています。しかし太陽光や風力発電は天候に大きく左右され、再生可能エネルギーへの依存が高くなるほどエネルギーは不安定化します。

世界的な資源価格の上昇で今年12月には大手電力会社とガス会社の全社が4カ月連続で値上げし、家計や企業経営を逼迫しています。

厳冬期の電力不足はもちろんのこと、台湾危機が現実味を帯びる中、日本のシーレーン(海上輸送路)が封鎖されることも想定した準備が必要です。日本政府は早急にエネルギー政策の失敗を認め、安定的に電力を供給できる体制を整備すべきです。

戦略なき脱炭素は国民道連れの"集団自殺行為"

政府の無責任な脱炭素政策は、「産業立国日本」にも壊滅的な被害を与えます。基幹産業である自動車は、エンジン車からの撤退圧力に悲鳴を上げています。

栃木県の真岡市では、約900人の従業員が勤めるホンダの工場が25年末までに閉鎖されることとなりました。これにより雇用が消失するだけでなく、固定資産税や法人税など市の税収が年間数億円単位で減ると震え上がっています。2050年までに「CO2排出ゼロ」を宣言する自治体は479に及んでいますが、せっかく誘致した工場を追い出すとは愚の骨頂です。

まるで、日本政府自ら自国の産業を解体するような異様な光景に、トヨタ自動車の豊田章男社長も「このままでは、最大で100万人の雇用と15兆円もの貿易黒字が失われることになりかねない」と危機感を露わにしました。

影響を受けるのは自動車産業だけではありません。熱を使ってモノを造り出す工業は基本、安くて安定した電力が供給されなければ成り立たず、脱炭素を徹底すれば日本中から工場が消えてしまうのです。

しかも、東京大学名誉教授の渡辺正氏やキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏によると、たとえ日本政府が自国経済の壊滅という代償を払って「温室ガス46%削減」を達成したとしても、0.001度も地球は冷えないというのです。

そもそも過去150年間の気温上昇はわずか1度に過ぎず、体感すらできません。温暖化の根拠とされる全世界の平均気温も、温度計が存在しない時代は樹木の年輪の幅など根拠の異なるデータから弾き出した代物で、"復元値"は大いに疑問です。

台風の数は過去150年ほど変わっていません。よく引き合いに出される北極のシロクマも、統計を見ると減少どころか増えています。さらに、地球は温暖化ではなく寒冷化に直面するという指摘もあるほどです。

政府は金融機関まで巻き込み民間に脱炭素目標を押し付けようとしていますが、国民を道連れにした"集団自殺行為"は許されません。日本の国益を護る気のない政治家に対しては、一体どこの国の代弁者なのかと問い質すべきではないでしょうか。


COP26に先立ち、世界各地で若者が「脱炭素」を求めるデモを行った。写真はイタリア・マリノ。画像:MAURO UJETTO / Shutterstock.com

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