焦点はリビアからシリアへ、米外交の内実レポート

2011.04.28

ワシントンポストのコラムニスト、デビッド・イグネシアス氏がアラブ・中東民主化に対するオバマ政権の動向について、ドニロン大統領補佐官(国家安全保障担当)の動きを中心にレポートしていて興味深い。以下は概要。

・  これから数十年のアメリカの外交方針を変えるであろうオバマ政権のこの革命に対する戦略をドニロン氏が立てている。

・  危機が広がり、アメリカは「利益」と「価値」の間で揺れている。エジプト、リビアについては「価値」を選び取って反乱と変化をサポートしたが、バーレーンやイエメンについては「利益」を選び取った。それは隣国のサウジアラビアの安定や、イエメンとの対アルカイダ同盟だ。

・  「利益」と「価値」のミックスは現実的対応で、オバマ大統領とドニロン氏らしい。それが試されるのがシリアでの対応だ。シリアのアサド大統領は冷酷な弾圧を始めているが、イランの同盟国であり反米的なアサド政権を倒すことはアメリカの「価値」にも「利益」にも一致する。ただ、アサド政権が倒れたら、宗派対立を引き起こす可能性がある。ゆえにドニロン氏はアメリカに政策的な柔軟性を持たせるだろう。

・  ドニロン氏の対アラブ基本戦略のガイドラインは4つある。(1)アラブ革命は、(1922年の)オスマン帝国の滅亡や第二次大戦後の中東の脱植民地化に比較される歴史的な出来事である。(2)どの国もこの変化から逃れられない。(3)この革命は弱い統治力、人口の増加、新しいコミュニケーション技術などの深い根を持つ。(4)アメリカやイランやその他の国が決めることができないこの土地固有の問題である。

・  ドニロン氏はいまシリアの問題に没頭している。ただ、リビアへの軍事介入のようになるかどうかは決まっていない。

シリアのアサド政権はデモ弾圧で多数の死傷者を出しており、アメリカを中心に追加制裁が検討されている。その内実にある程度迫ったレポートだ。

大きな方向性として、オバマ大統領がアラブ・中東の民主化は避けられないものとして、何らかの形で後押ししようとしている。オバマ大統領はもともと「親イスラム」と言われてきたが、長期的な外交戦略でもそれを現実化しようとしていることがよく分かる。(織)

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