中国、台湾への個人旅行を突然停止 一方の日本は中国人観光客増加へ動く
2019.08.02
《本記事のポイント》
- 中国が矢継ぎ早に、台湾に対する圧力を強化している
- 背景にあるのは、米台関係が急速に接近していることへの警戒感
- 一方の日本は、中国人観光客を増やす施策を実施する無警戒ぶり
中国が台湾に対する圧力を強めている。
中国政府は7月31日、台湾への個人旅行を8月1日から全面的に禁止することを発表した。個人旅行の禁止は異例の措置で、期限は示されていない。中国文化観光省は「現在の両岸(中台)関係のため」と説明している。
さらに中国は、7月28日から台湾近海の2カ所の海域を航行禁止区域に指定。その理由は、浙江省沖と広東省沿岸で、軍事演習を行うためだとしている。
中国は経済的・軍事的に台湾に圧力をかけ、来年1月の総統選で再選を目指す蔡英文陣営をけん制している。
米台関係強化で、中国は反発
中国が圧力を強める背景には、米台関係接近への警戒感がある。
蔡氏は7月に、カリブ海諸国への外遊の経由地としてアメリカを訪問。米ニューヨークで、外交関係のある各国大使と面会し、コロンビア大学で演説などを行った。5月には、台湾の国家安全会議(NSC)の李大維(り・だいい)秘書長が、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と会談。NSC高官が国家安全保障問題補佐官と会談したのは、米台が1979年に断交して以来初めてとなった。
アメリカも、台湾重視を鮮明にしている。台湾に対する武器の輸出をめぐり、従来の複数案件を1度に通告する「パッケージ方式」から、個別に通告する「FMS方式」に切り替え、迅速に輸出できるようにした。戦車や地対空ミサイルなどを台湾に売却することを承認し、台湾の国防力強化を具体的に支援している。
こうした米台関係の動きに、中国は反発している。
日本の外務省は中国人観光客増加へ
米台vs.中の対立が浮き彫りになる中、中国に対抗すべき日本の外務省は、中国人のビザ申請を電子化し、観光客を増やそうとしている。昨年の訪日外国人観光客数では、中国人が最多の838万100人。インバウンドを増やして、観光産業を活性化させようとしている。
だが、中台関係をみると、日本の外務省の方針は無警戒すぎるのではないか。
周知の通り、日中は尖閣諸島などをめぐって対立しており、緊張関係にある。台湾と同じように、中国は観光客の増減をコントロールすることで、日本を支配下に置こうとするだろう。日本としては、対中依存度を高めることは危険といえ、リスクの少ない国の観光客を増やすべきだ。
日本は、中台関係の情勢変化を自国のこととして捉え、中国への融和政策を転換し、対中依存度を下げる対策を急ぐ必要がある。
(山本慧)
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