釈量子の志士奮迅 [第71回] - 「治水」こそ「治世」の始まり
2018.07.29
2018年9月号記事
第71回
釈量子の志士奮迅
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
「治水」こそ「治世」の始まり
「平成30年7月豪雨」で亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りすると同時に、被災された皆様へのお見舞いを申し上げます。
今回の豪雨を受け、私は7月8日から被災地の広島県を視察・慰問いたしました。その惨状を見て、「防災」という言葉の重みを痛切に感じました。
何度も訪れている広島空港。着陸前にいつも見下ろしていた、空港周りの道路が、土砂や流木で寸断されているのを目の当たりにし、息を呑みました。
市街地へのアクセスに使っていた鉄道もリムジンバスも軒並み運休していました。主要な高速道路や国道も止まる中、何とか現地スタッフの車で広島市内に入ります。そこでは、スーパーやガソリンスタンドに並ぶ車が渋滞し、大雨の中、ガス欠で止まった車を手で押す人たちの姿もありました。
その後、呉市に向かいます。ここは道路が寸断された「陸の孤島」でした。唯一のアクセスであるフェリーで現地入りすると、各所で道路が陥没し、断水のため、給水車に長蛇の列ができていました。
各所で被災された方々のご苦労や、近くで犠牲者が出たといった話を聞く中で、考えさせられたことがあります。それは、二度と同じ不幸を起こさないための手立てや備えをするという断固たる決意です。防災が十分でなければ、ある日突然、かけがえのない日常が失われるのです。
特に広島県は、水を含むと土砂崩れしやすい「真砂土」の土壌が広がっています。地域の皆様は口々に迅速な対策を求めておられました。
広島県では、花崗岩が風化して細かくなった砂状の「真砂土」が、しばしば土砂災害の原因となる。
防災インフラが救った命も
一方、防災に力を入れたからこそ、被害を抑えられたという話も耳に入ってきました。
例えば、大阪市南東部には低地が多く、昔から洪水に悩まされてきました。そこで1984年、一帯に降った雨水を海に放流する「なにわ大放水路」の建設が始まります。12キロ以上の大トンネルを16年にわたって打ち抜くという大事業でしたが、完成後、今回のような豪雨から人々を守っています。
高知県では今回、大きな被害を受けた岡山県(死者59人)、広島県(同100人)、愛媛県(同26人)と同程度の降水量だったにもかかわらず、死者は3人でした(7月14日時点)。
高知県庁にも表敬訪問させていただきましたが、「台風銀座」と言われている同県だからこそ、河川改修や堤防建設などに、力を入れてきたとのこと。
良くも悪くも、政治における「治水」の重みを実感します。
「治水」は政治の根幹
そこで思い至るのが、古代中国の禹という君主です。尭・舜と並び、孔子や後世の王が、為政者の理想像と崇めた伝説的君主の一人。禹の何がすごかったのかというと「治水」です。洪水の絶えなかった黄河を治めることに成功して王となり、その後、夏王朝を築いたのです。禹は別名、「治水の神」とも言われます。
つまり、「治水」というのは古来、政治の根幹・基本であったのです。
しかし日本ではこの20年間、治水予算が半分近くに減っています。自民党の小泉政権が財政再建と称して大幅に削り、さらに「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権(当時)が追い討ちをかけました。
しかし今回の被害を機に、「命を守る防災への投資は、政治の最重要な仕事」という原点に立ち返るべきです。建設国債を発行するなどして、「防災大国」を目指す必要があります。
防災インフラ「量質」の充実を
もちろん、全国をコンクリートで埋め尽くすわけにもいきません。
しかしそこは、めざましい技術の進歩でカバーできる面も広がっています。
例えば、富山大学では、波同士が打ち消し合う作用によって、津波の高さを約10分の1に"減らす"新型の防波堤が考案されています。高い壁で津波を"防ぐ"堤防に比べ、景観に優しいとして注目されています。
「ハード」だけではなく「ソフト」にも投資する発想も必要です。堤防などの建設のみならず、各自治体におけるスピーディーな避難体制も構築しなければなりません。国内外には、人工衛星とスーパーコンピューター、人工知能(AI)を組み合わせることで、より精度の高い洪水予測をする研究も進んでいます。
幸福実現党は今後も、防災インフラを「量」「質」共に充実させるべく、様々な提言を行ってまいります。
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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