過疎地での医療事業、相続税免除へ 政府は根本的な税制度の見直しを
2017.08.29
《本記事のポイント》
- 厚生労働省が過疎地での医療事業の相続税免除へ
- 税収の2%しかないのに、事業存続を妨げる相続税
- 「二重課税」の問題も
税制度は、国民の経済活動に大きな影響を及ぼす。医療分野も、その例外ではない。
このほど厚生労働省が、過疎地などでの病院、診療所の相続に際して医療業務に必要な土地や建物に課せられる相続税を免除する方針を固めた。23日付時事通信社が報じた。
これには、医師が都会に偏り、過疎地で不足していることが背景にある。それに加えて近年、土地や建物に多額の相続税がかかることで、地方の医療機関が廃業するケースが増えている。
厚労省はこうした状況に対処するために、個人開設で都道府県知事が認定した医院に限って相続税の支払いを猶予し、後継者の医師が5年間運営した時点で相続税を免除する案を、来年度の税制改正要望に盛り込むという。
地方での医師不足は、今後一層深刻になると予想される。その意味では必要な対策といえるだろう。
事業存続を妨げる相続税
この相続税の問題は、医療分野に限ったことではない。一般的な家庭や、個人事業主全般にとっても大きな問題となっている。
税の範囲は、預貯金や現金だけではなく、不動産、生命保険等にまで及ぶ。特に不動産などは一部を現金に変えるといったことが難しく、土地をそのまま所有する場合に支払う金額も高額になる。そのため、もともと住んでいた土地に住めなくなったり、個人で持っていた事業を引き継げなくなるといった例が多い。
相続税から逃れるために、生前に親戚に分け与えたりするという手もある。ただ、生前には「贈与税」という税金がある。一定額を超えた資産を譲渡された場合、もらう側に税金がかかるというものだ。
相続税、また贈与税の問題の一つは、「二重課税」になっているという点だ。国民は「所得税」という形で、働いて得たお金から一定の額を支払っている。それにもかかわらず、人生の終わりを迎えた際に再び税金を取られる、というのはおかしな話だ。
それに実は相続税は、税収のうちのほんの一部を占めるにすぎない。財務省の発表によれば、2017年度予算となった国税、地方税のうち、相続税・贈与税の割合はたった2.1%に留まる。廃止されても財政に大きな影響はない。
国民が富み、私有財産が増えることによって税収も増えるというのが本来の形だ。相続税によって大きく資産を削られ、そればかりか、家族で始めた事業も存続できない。こうして国民が自由に富を使うことができない。経済活動が妨げられれば、払える税金は少なくなっていく。
政府は経済を繁栄させ、国民全体の富を増やすためにも、税負担について、もっと根本的な改革が必要だ。(祐)
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