ローラも泣いていた「奴隷契約」 法廷では通用しないケースがほとんど
2017.08.11
話題となったローラさんのツイッター
《本記事のポイント》
- 週刊文春が報じた「ローラ『10年奴隷契約書』」
- 法廷では「奴隷契約」は退けられてきた
- 今年、急に動き出す「タレント保護への取り組み」
テレビでは笑顔を見せ、視聴者に元気をくれているタレントが、裏では事務所とのトラブルで泣いている――。こうした事例が最近、次々に明らかになっている。
モデルのローラさんが6月、自身のツイッターで「ローラ最近裏切られたことがあって心から悲しくて沈んでいるんだけど、わたしは人には絶対にしない」「黒い心を持った人とは絶対に一緒にいたくない。10年の信頼をかえしてください」といったツイートを投稿し、その真意について様々な憶測を呼んだ。
この件に関して、9日発売の「週刊文春」が「ローラ『10年奴隷契約書』」という見出しで、事情を知るとされる関係者の声を報じている。ツイッターの背景は、このように説明されている。
ローラさんの所属事務所は、最初は小さな規模だったが、ローラさんが売れると急成長した。当初、所属事務所の社長は、ローラさんの相談に親身に乗るなど溺愛していたが、一方で彼女の私生活を徹底的に管理し始めたという。
例えば、人と合うときには、必ずマネージャーに報告させた。ある時、ローラさんが仕事で知り合った男性と食事に行ったことを知り、激怒。
その後、半ば暴力的に脅す形で、契約書にサインさせたという。その内容は、「10年という長期契約」「事務所の了解がないと辞められない」「契約終了後、二年間は芸能活動ができない」というものだった。
こうした契約の中で、ローラさんは、ギャラも減らされ、意に沿わない仕事もさせられ、精神的に追い詰められていった。パニック障害や、うつ病寸前の状態になった――。
こうした報道がされる中、ローラさんが独立に踏み切ろうとしているとの憶測もある。彼女と事務所の間のトラブルが、どう決着がつくかはまだ分からない。
法廷では「奴隷契約」は退けられてきた
しかし過去の事例から見れば、いざ裁判となったときに、事務所側の言い分が退けられるケースは多い。
歌手アイドルとして一世を風靡した鈴木あみさんは「過密スケジュールによる極限の疲労で、コンサート中に声が出なくなっても、病院に行かせてもらえない」といったマネジメントに疑問を感じていたという。そして2000年12月、事務所に独立を阻まれ訴訟を起こした。01年7月、鈴木さんは勝訴し、フリーランスとして活動することが認められた。
アイドルの「恋愛禁止」に関しても、司法判断の事例がある。あるアイドルグループのメンバーは、「ファンと交際したら、損害賠償を求める」という取り決めを事務所と結んでいたが、ファンの男性との交際を始め、事務所を辞めた。事務所側は2016年1月、990万円の損害賠償を求めて提訴。東京地裁は訴えを、「交際は幸福追求権の一場面」として退けた。
「所属事務所が意に沿わない仕事を取ってくる」ことなどに不満を感じていたタレントの小倉優子さんは2010年9月、所属契約の解除を求めた。それに対し所属事務所は、小倉さんに1億円の損害賠償を求めて訴訟を起こした。しかし東京地裁は16年9月、事務所の請求を棄却。小倉さんの勝訴となった。
法廷の場に行けば、独立・移籍などを阻止する「奴隷契約」は、憲法や民法などに反すると判断されるケースが多いようだ。
とはいえ、裁判をするには時間もお金もかかる。判決が出るまでの間に、芸能人生が終わってしまうことも多いため、泣き寝入りせざるを得ないタレントが多いのも事実かもしれない。
今年、急に動き出す「タレント保護への取り組み」
一方、そうした「奴隷契約」と言われる実態や、事務所とタレントの間のトラブルを事前に防ぐための動きも、最近見られ始めた。
6月には、若手弁護士が集まって、「日本エンターテイナーライツ協会」を設立。タレントの権利を守り、セカンドキャリアを支援するほか、「統一契約書づくり」「立法提案」を通した芸能人の地位向上を行っていくという。
(参照: http://the-liberty.com/article.php?item_id=13110 )
また、今回のローラさんに関する報道のように、タレントのいわゆる「奴隷契約」に関する報道は急激に増え、国民の関心も高まっている。
どれも、今年に入ってからの動きであり、急展開と言える。タレントと事務所側が、円満な関係を結べる社会は実現するのか。「クール・ジャパン」を推し進めていく一環として、その推移を見守りたい。
(馬場光太郎)
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2017年6月10日付本欄 芸能人の駆け込み寺「日本エンターテイナーライツ協会」発足 「対立でなく、芸能人と事務所の架け橋になりたい」
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