芸能人の権利を守るERA共同代表理事の弁護士(後列左から、佐藤氏、向原氏、望月氏、安井氏、河西氏)と、サポーター(前列左から、今野さん、桑原さん、しほりさん)ら。

近年、所属事務所との契約の問題や、セクハラ・パワハラなど、芸能界をめぐって、さまざまなトラブルが起きている。

そうした状況から芸能人個人の権利を守ろうと、若手弁護士が中心となって設立された「日本エンターテイナーライツ協会(略称ERA、イーラ)」の発足会見が9日、東京都内で行われた。

会見には、同協会の共同代表理事を務める弁護士の望月宣武氏、向原栄大朗氏、安井飛鳥氏、河西邦剛氏、佐藤大和氏が出席。

同協会のサポーターで運営にも協力する、元SKE48のメンバーで女優・ダンサーの桑原みずきさん、ももいろクローバーZや水樹奈々さんに楽曲提供している音楽家のしほりさん、俳優の今野悠夫さんも同席した。

統一的な契約書づくり、立法提案を目指す

同協会は、俳優やアイドル、歌手や芸人、スポーツ選手などの個人を対象に、(1)芸能人の権利を守ること、(2)芸能人のセカンドキャリアを支援すること、(3)芸能人の地位を向上させること、を主な活動の柱とする。

また、立場が弱くなりがちな芸能人が事務所側と公平・対等な契約を結べるように「新しい統一的な契約書づくり」や、芸能人の権利を守る「立法提案」などを目指す。

同協会には、「驚くぐらいの反響」(望月弁護士)があり、すでに、数十件の相談が寄せられている。8月には、専門家を招いて会員向けの勉強会を開くという。

冒頭で挨拶した佐藤弁護士は、「決して、事務所側と対立したいわけではありません。私たちは、芸能人と芸能事務所の架け橋になって、日本の芸能界が世界で戦える、ということを示していきたい」と語った。

また、安井弁護士は、こう話した。

「芸能人は、そもそも違法・不当な契約や待遇にもかかわらず、その認識がまったくない方。あるいは、そうした待遇に不安や不満を感じているが、誰に相談していいか分からない方。常に過酷な状況に追い詰められて、心身を害し、他人に相談しようというパワーすら失っている方が少なくないように感じます。芸能人のセーフティーネット、駆け込み寺として機能できるような勉強会・相談会も実施していきたい」

セクハラ、金銭、暴力……。「芸能人もしっかりしていいんだぜ!」

俳優のかたわら、俳優の互助団体を運営する今野さんは、俳優から寄せられる多くの訴えの代表的なものとして、3つ挙げた。

1つ目は、「セクシャル」な問題。ドラマや映画などにキャスティングすることと引き換えに肉体関係を強要されるケースや、10カ月以上も「僕と寝ると、芝居が上手くなるよ」などと言われ続け、ストーカー被害を受けたケースなど。

2つ目は、「金銭」の問題。映画の劇場公開作のメインキャストにもかかわらず、ギャラや交通費がもらえなかったり、出演させる代わりに数十万円を払え、と迫られたりしたケース。

そして、3つ目は、今野さん自身も受けたという「暴力」の問題。ささいな意見の食い違いから、その筋の人を使って、「お前を殺すぞ」「明日、お前、バイト帰りにここ通るだろう。そこでヤルからな」などと一週間にわたって殺害予告を受け、脅されたケース。

そうした問題の中で、異口同音に発せられるのが、「業界のルールに従え」という言葉だという。

今野さんは、次のように話す。

「仕事を提供してもらう立場の役者は、どうしても地位が低くなりがち。営業努力は必要ですが、作り手側とのバランスを欠いています。そのバランスを整えてくれるのがERAだと、今回の設立を喜んでいます。ただ僕は、製作や作り手側に変われ、と言いたいのではありません。変わるべきは、役者サイドだと感じています。僕がERAを通じて世の中に発信したいことは、『芸事をやっている人間も、しっかりしていいんだぜ!』ということです」

本来、人々に夢や希望、勇気を与えてくれるはずの芸能界だが、残念ながら、その裏では、多くの芸能人が涙を流し、時に、心や身体を壊している現状がある。

もちろん、どんな業界にも、努力・精進のプロセスで流す涙はあっていいだろう。

芸能に携わる人々が、自分の強みや才能を生かし、心から成し遂げたい思いを実現できるよう、ERAのような活動が広がることを願いたい。

(山下格史)

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