ニーズに応える保育園サービスへ――しらかし貴子【都議選・もっと身近な東京問題】
2017.06.21
中野区代表
しらかし 貴子
(しらかし・たかこ)1983年新潟県生まれ。新潟女子短期大学(現・新潟県立大学)卒。都内の認可保育所で保育士を務めた後、現在、小規模認可保育所の園長として勤務。
筆者は保育園の園長をしている。現場にいる中で、現在の保育の体制は、親の気持ちも、子供の気持ちも、保育士たちの気持ちも、すべて置き去りにしていると感じている。
筆頭に上がるのは、もちろん待機児童の問題。保育園を探す親の労力は、極めて大きい。保育園の入所基準は点数制だ。片親ならばその点数が最高になるため、どうしても入りたい保育園がある場合、離婚する親までいる。
「どの保育園でも入れればよい」と入った保育園が家から離れた場所にあったため、引っ越しを余儀なくされたケースもあった。また、入園できない場合に備えて認可外保育園の予約をしたところ、100人待ちだったというケースもあった。
子育てをしているだけでも、仕事をしているだけでも大変だが、それに加えて保育園探しに割く労力は、大変なものがある。
「老人施設との併設」や「シルバーサポートの保育参加」がカギ
筆者は、待機児童問題を解消する一つの方法として、「老人施設との併設」が有効だと考えている。
例えば北陸には、老人福祉施設と一体化した保育園がある。その保育園では、子供たちに労わりの心や優しい心がよく育っている。高齢者も、子供たちと触れ合うことで生きがいを見つけ、幸せな最期を迎えている。
また、シルバーサポートの高齢者が保育に参加し、家族のように関わっていけるようにしてもいい。
例えば「子供に熱が出た」という時、世話をお願いできる、子育ての助言をしてもらえる――。そうした「地域のつながりをつくる場」としての保育というのもあり得る。そのためには、規制緩和が不可欠となる。
規制緩和を行い、多様なニーズに応える
また、自由に保育園を選ぶこともできないという問題がある。
さまざまな保育園を見学してきたが、保育の質の差は大きく開いている。自発的に頑張っている保育園もあるが、何もしなくとも子供は来るため、ほとんどの保育園の質は下がる一方だ。
また、「職場の近くがいい」「障害のある子供を預かってほしい」など、保育園へのニーズも多様となっている。教育プログラムが充実した保育園があってもいいだろうし、ナニーサービスのように、一対一でじっくりと子供と関わる保育サービスがあってもいい。
しかし、新しいサービスの保育園をつくろうと思っても、国や市区町村の補助金要件を満たすためには、それもできない。
規制緩和によって、多様なサービスを提供できる体制を整え、さらにバウチャー制度(*)で好きな保育園を選べるようにしていかなければならない。
こうした自由な保育行政により、保育業界全体のモチベーションも高まっていくのではないかと考えている。
(*)個人に対し、保育園などの特定の行政サービス利用に限って補助を行う制度。
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