「生贄型」グローバリズムの終わり - 編集長コラム
2017.01.29
写真:Diane Bondareff/Invision/AP/アフロ
2017年3月号記事
編集長コラム Monthly Column
「生贄型」グローバリズムの終わり
―なぜトランプ革命から300年の繁栄が始まるのか
「アメリカ国内に工場を建てろ。さもなくば高い関税を払え」
アメリカ新大統領のトランプ氏は、日米の製造業をツイートで次々と攻撃し、正式就任前から各国に"貿易戦争"を仕掛けてきた。
貿易ばかりか移民問題でも、「メキシコとの国境に壁を築く」ことを強行しようとしている。
2016年6月にはイギリスがEUからの離脱を決めた。
国境を低くし、人・モノ・お金が世界を自由に行き来するグローバリズムの流れは、1980年代から強まった。それが今、逆転し、反グローバリズムとナショナリズムが時代の潮流となっている。
衰退の原因はグローバリズム
グローバリズムの主役は、多国籍企業と中国だ。
アメリカや日本の製造業は80年代以降、安いコストを求め、工場を中国などに移転させた。
その結果、中国経済がGDP(国内総生産)で30倍以上成長した一方、日米ともミドルクラスが失業したり、所得が落ち込んだりした。日本の場合、GDPが約25年間伸びないうえ、1世帯当たりの平均所得が94年から120万円以上も減ってしまっているから深刻だ。加えて、企業や個人が政府に納めるべき税金も少なくなってしまった。
幸福の科学の大川隆法総裁は近著『 繁栄への決断 』でこう指摘した。
「日本がこの二十五年間で衰退したことには幾つかの原因があると考えられますが、私は、その核心は『グローバリズム』だと思うのです」
源流はユダヤ人の商慣習
グローバリズムのもう一つの主役は、多国籍企業と結びついた米英のユダヤ系の金融資本家だ。 ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどが、アメリカのユダヤ系の金融機関として知られる。
国際通貨基金(IMF)や国際決済銀行(BIS)とも強く結びつき、世界各国で自由なビジネスができる環境を追求している。国境をなくし、人の移動やモノの輸出入、お金のやり取りを自由にできるほうがいい―。そうした環境が世界に広がれば、多国籍企業と米英の金融機関が進出し、稼げるというわけだ。
グローバリズムの"教義"の中心はユダヤ人の伝統的な商慣習だ。
歴史的にユダヤ人は迫害を受け続け、いつ自分たちの財産を奪われるか分からなかった。だから、持っている財産はいつでも売ったり買ったりできなければならない。その「自由なビジネス環境」を取引相手にも求めたのが、グローバリズムの出発点とされる。
しかし、米英の金融機関と多国籍企業、そして中国だけが稼いで、米国の国民の生活が十分守られない。トランプ氏は2016年4月、大統領選中の外交演説でこう語っていた。
「私たちはもはや、グローバリズムという間違ったうたい文句のために、この国と国民を犠牲にすることはしない。国民国家こそ、幸福と調和の真の基礎であり続けるものだ」
"生贄"が必要
トランプ氏は、オバマ前大統領時代のリベラリズムにも「NO」を突きつけた。オバマ氏が強化した富裕層から貧困層への所得再配分の仕組みをひっくり返そうとしている。
宗教的に見れば、リベラリズムの源流はキリスト教にある。「百匹の羊のうち、1匹が迷ったら、その羊を救いに行く」というのがイエス・キリストの愛の教え。それを曲解し、政治的に組み替えて実現したのがマルクスの共産主義だ。
マルクスは「貧しい人たちは搾取されている」と考え、お金持ちを憎み、その富を強制的に奪って配分する政治制度を考えた。リベラリズムはその流れにある。
一方、ユダヤ教を源流とするグローバリズムには、「ユダヤ人を迫害する国家という存在を憎み、あわよくばなくしたい」という考え方が根底にある。
お金持ちにせよ、国家の存在にせよ、 "生贄"を必要とするリベラリズムやグローバリズムは、最終的に大多数の人々の幸福を生むことはないだろう。
「生贄型」をトランプが葬る
大川総裁は前出の『 繁栄への決断 』で、両者の共通点について述べている。
「それ(グローバリズム)自体はもともと資本主義的なものだったはずであり、『アメリカンスタンダードを広めれば、世界が豊かになって、幸福になれる』という考えだったのでしょうけれども、どこにでも同じルールを適用していくと、結果として共産主義に似てくるところがあるわけです」
グローバリズムは、「自由なビジネス」のためのルールを各国に押しつけ、中低所得層を押し潰している。共産主義やリベラリズムは、お金持ちに重税をかけ、全員を「貧しさの下の平等」へと押し下げる。
トランプ氏が、この「生贄型」のグローバリズムとリベラリズムを葬り去ろうとするのは、時代をとらえた優れた判断だということになる。
トランプ氏は「利自即利他」を実践?
これからの時代は、"生贄"をつくり出さない社会を開くべきだろう。仏教的に言うならば、自分も他の存在も害さない利自即利他の中道が求められる。
大川総裁は1994年に発刊された『 理想国家日本の条件 』の中で、利自即利他の国家間の関係について述べている。
「その国を豊かで、理想的なるものにすることは、まずその国自身の責任であり、豊かで理想的なる国をつくり、そして各国の国益を世界の利益と調和させるところに、理想の世界国家関係が成り立つのだ、ということを知らなければなりません」
トランプ氏も、まずは自分の国を豊かにし、そのうえで超大国としての責任を果たそうとしている、と見るべきだろう。
「善きグローバリズム」の時代
日本も利自即利他の国家関係を追求すべきだろう。 大川総裁は著書『 自由を守る国へ 』でこう指摘している。
「日本は、日本の独自性をある程度踏まえた上で、『標準は何か』ということを考えるべきでしょう。そして、日本モデルを、アジアやアフリカ、あるいは、ヨーロッパの一部等に広めていくスタイルをつくったほうがよいと思います」
その一つが、長期的に人や企業を育てる日本型の資本主義の復活だ。
90年前後の日本のバブル崩壊までは、5年や10年、それ以上の期間にわたってお金を貸し、企業を育てる日本の金融のスタイルが機能していた。
その源流には、勤勉さや正直さの価値を教える「二宮尊徳精神」がある。明治期の国内や台湾、朝鮮の近代化は、「二宮尊徳の大量輩出」運動によるもので、戦後の復興・成長期もその精神が生かされた。
しかし90年代、短期的な利益を求めるアメリカ流のグローバリズムが席巻。日本の長期系の金融機関は敗れ去ったが、その流れがトランプ氏の登場で逆転した。
日本型の資本主義を世界に広げ、途上国・新興国の人材と企業を育てることが、やがて「生贄型」のグローバリズムをなきものにするだろう。
グローバリズムは本来、先進国が成し遂げた豊かさを途上国・新興国にも広げるもの。 ナショナリズムと両立する「善きグローバリズム」の時代を、日本なら開くことができる。
「善きリベラリズム」の時代
途上国などで産業を育てるということは、日本はもっと高度で付加価値の高い産業を生み出す努力をしなければならないことを意味する。
大川総裁は、著書『 資本主義の未来 』でこう述べた。
「今までにないものをつくり出す、考え出す、生み出す力です。これが大事であり、『どうやって、創造的な頭脳をこの国につくり出すか』ということが大事なのです」
リニア新幹線網などの交通革命によって人生の密度を濃密にする。宇宙や海中など人間活動のフロンティアを開く。人口・食糧・エネルギー問題など人類的な課題を解決する―。
こうした新しい産業モデルを創り出し、"無限の富"を生むことが、お金持ちから富を奪うリベラリズムや共産主義の役割を終わらせる。 これからは、莫大な富をもとに騎士道精神で弱者を助ける「善きリベラリズム」の時代が始まる。
日本こそ、利自即利他の精神にもとづく共存共栄の世界をつくり出すことができる。
新しい世界宗教
今は、約300年前の欧米で確立した近代資本主義、その後の共産主義が終わろうとしている時代だ。それは、これから300年にわたる未来型の資本主義が生まれる時代でもある。
同時に、グローバリズムとリベラリズムの源流にあるユダヤ教とキリスト教は、今までのような政治・経済への強い影響力を失っていくのかもしれない。
その点で、ユダヤ教、キリスト教が世界に広がった2千~3千年単位の文明的な転換点がやってきているのではないだろうか。
これからの時代に求められる新しい世界宗教は、利自即利他や慈悲の精神を基調とする現代的仏教であり、今までにないものをつくる「創造の法」を説く先進的宗教だろう。
「トランプ革命」から始まる変革は、300年にわたる繁栄、2千~3千年の新しい文明の出発点となる。
(綾織次郎)
グローバリズムとリベラリズムが不幸を生んだ?
BC13世紀 ・ユダヤ人の商習慣
19世紀 ・ユダヤ系の金融資本家
20世紀 ・IMF・BIS
20~21世紀 ・多国籍企業・中国
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グローバリズム
お金を稼ぐために、国境をなくして、人・モノ・お金の移動を自由にする
生贄は
中低所得層
0 ・キリスト教の愛の教え
19世紀 ・マルクス
20世紀 ・福祉国家・ソ連
20~21世紀 ・ビル・クリントン・オバマ・ヒラリー
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リベラリズム
貧困をなくすために、お金持ちから貧しい人へ強制的に富を再分配する
生贄は
富裕層
日米がつくるこれからの繁栄
グローバリズム*リベラリズム
利自即利他の追求
アメリカ
トランプ革命
日本
日本型資本主義の復活
創造的資本主義の始まり
300年の繁栄、2千~3千年の文明転換
善なるグローバリズムと善なるリベラリズムの時代が来る
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