オバマ政権、任期中のTPP議会承認を断念 日本はタフな外交力を
2016.11.15
環太平洋経済連携協定(TPP)について、アメリカのオバマ政権が、来年1月の任期中までに米議会の承認を得ることを断念したと、複数の米メディアが報じている。
次期アメリカ大統領になるドナルド・トランプ氏がTPPに反対しているため、TPPの発効は難しい状況だ。
それでもオバマ大統領は、今月ペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に合わせ、各国首脳にTPPの重要性を訴えたいとしている。
ペルーのクチンスキー大統領は、「アメリカ抜きでもTPPと似た協定をつくることはもちろん可能で、そうした議論はすべきだ。アメリカがTPPから離脱する場合は、中国やロシア、それにほかの環太平洋の国々も含めた協定となるのが望ましい」と指摘している(12日付NHKニュース電子版)。
「中国包囲網」という意味があったTPP
TPPは、表向きは経済協定だが、裏には、自由貿易のルールに入れない中国に対する「包囲網」の役割がある。TPP加盟国同士で関税を撤廃することで経済協力を強め、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通じた経済協力によって覇権を拡大させようとする中国をけん制する狙いがあった。
ただTPPには、ある意味で、「ブロック経済」の側面があることも否めない。国際社会が、自由な貿易を行うための過渡的な手段の一つという見方もできるだろう。
次期大統領のトランプ氏はTPPに反対している。
関税は「外交上の武器」
トランプ氏の真意について、大川隆法・幸福の科学総裁は、大統領選の翌日に行った法話の中で、次のように指摘している。
「 ドナルド・トランプは、『関税制度すなわち輸入にかける税金は、外交上の武器の一つである』と考えているわけです。たとえば、中国がアジアの国を侵略しようとしたら、トランプは中国からの輸入品に対する関税率を変えるでしょう。これは"熱い戦争"を起こさず、銃弾もミサイルも第七艦隊も使わない"武器の一つ"です 」
実際にトランプ氏は、中国への輸入関税として45%、メキシコには35%を課すという考えを示している。実業家であり、経済のプロとして、関税という武器を効果的に使いながら、中国に圧力をかける戦略を描いているのかもしれない。
もちろん、国際社会で貿易における自由性が高まることは望ましいが、アメリカがTPPに参加しない代わりに、関税を武器に本気で中国に圧力をかけるのであれば、日本もTPPを絶対視することなく、柔軟に対応すべきだろう。
安倍晋三首相はAPECに向かう途中の今月17日に、トランプ氏と会談を行う予定だ。この会談は、TPPに関するアメリカの行方を見極める絶好の機会となる。
今後日本には、トランプ氏をはじめ、ロシアのプーチン大統領やフィリピンのドゥテルテ大統領といった一筋縄ではいかない元首たちと渡り合うだけの胆力と、タフな外交力が必要になってくる。
(山本泉)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『トランプ新大統領で世界はこう動く』 大川隆法著
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