日本がアフリカに3兆円を投資 「植民地主義」終わらせる世界史的意義
2016.08.29
国際連合安全保障理事会会議場 By Patrick Gruban (画像は Wikipedia より)
日本とアフリカ諸国の協力の深化が、世界に様々な影響を与えそうだ。
ケニアの首都ナイロビで開かれた第6回アフリカ開発会議で、安倍晋三首相がアフリカに官民で総額約3兆円規模の投資を約束すると表明した。この会議は、日本政府が主導し、アフリカの開発や支援をテーマに開かれる。今回、日本が提示した施策の中には、国際的な批判を浴びる、中国のアフリカ進出への打ち返しとみられるものが目立った。
質の高いインフラ投資と人材育成
投資先としては、インフラ整備と人材育成が軸だ。インフラ整備では、都市交通や地熱発電所の建設などで、官民が投資・協力する。また、ものづくりや保健分野などで1千万人の人材を育成すると掲げ、今後3年で5万人に職業訓練を提供するとした。
一方、これまでアフリカへの活発な投資を行ってきた中国は、労働者を中国から送り込み、現地の人材を十分に活用してこなかった。資源の開発も、中国が天然資源を確保することが主な目的とみられ、各国の人々の生活の向上につながっているとは言い難いものだった。
アフリカに必要なのは、仕事を創り、雇用を生み出すことだ。そうすることで人々が貧困を克服し、各国の経済も発展していく。日本が提示した投資計画は、人々の生活を構築し、産業を創り出すという意味で、中国のアフリカ進出とは性質の異なるものである。
第二次世界大戦の体制を超えて
今回、大規模なアフリカ支援のもう一つの側面として注目されているのが、国連安保理改革に関するものだ。今回の大規模な支援は、日本の安保理常任理事国入りに向けた支持固めの一環ともみられている。
常任理事国を変更するには、国連憲章を改正する必要がある。その第一の条件が、国連加盟国の3分の2の賛同を得る、というものだ。その中で、中国の強い影響が及びつつあるアフリカ大陸の54カ国味方にできるかどうかは、日本にとって極めて重要だ。
安保理改革は、日本の加盟にとどまらない。安倍首相はアフリカ開発会議の演説で、「国連安保理改革こそは、日本とアフリカの共通の目標」として、アフリカの国が常任理事国入りすることを支持すると表明している。
現在、国連安保理の常任理事国は、第二次世界大戦の「戦勝国」で構成される。戦後70年を過ぎ、各国の立ち位置や関係も変化している今、戦勝国以外の国々の加盟を検討すべきなのは当然のことだろう。日本をいつまでも「敵国」として扱う国連の体制は時代に取り残されたものだ。
先の対戦で日本が戦ったことにより、欧米の植民地主義は事実上の終焉を迎え、アジア・アフリカ諸国は次々と独立した。かつて日本が戦ったことには正義があったと言える。
いまや、中国は各国への投資という形で経済的な依存を生じさせ、新たな「植民地主義」を広げようとしている。アフリカの諸国が国力を高め、繁栄していくことは、世界から永久に植民地をなくすためにも重要だ。日本型の投資が、世界史的に持つ意味を改めて確認したい。
(河本晴恵)
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