台湾総統選有力の民進党 「一つの中国」の圧力に耐えられるか
2016.01.13
16日投開票の台湾総統選挙は、独立志向の強い最大野党・民進党の蔡英文主席が、国民党の朱立倫主席を大きくリードしている。最大の争点となっているのは対中政策だ。国民党は「中国との経済強化を促進する」方針であるのに対し、民進党は「中台関係の現状維持」を主張している。
台湾住民の大半は現状維持を希望
2015年11月の台湾当局の調査では、台湾住民の88.5%が「現状維持」を望んでおり、「速やかな統一」も「速やかな独立」も望んでいないことが分かっている。
今回の総統選をリードしている民進党の蔡氏は、12年に続く2度目の挑戦となる。前回の総統選で蔡氏は、馬英九政権が主張した「一つの中国」の原則に合意した「1992年コンセンサス」を認めず、台湾の独立志向を主張した。しかし、中国に依存を深める経済界が、投票直前に馬総統の再選を支持し、蔡氏は大差で敗北した。
こうした経験を踏まえ、蔡主席は今回、「92年合意」についての言及をなるべく避け、多くの国民の支持を受けやすい「現状維持」で、民意に従って中台関係を推進する立場を取っている。
習氏が蔡氏に向けたメッセージ
しかし、台湾の馬総統と中国の習近平国家主席は2015年11月、1949年の中台分断後初となる中台首脳会談を行い、92年合意の「一つの中国」の原則を確認したばかりだ。
習主席はこの時、「両岸は一つの国家、一つの民族だ」として「台湾独立に絶対反対する」と強調し、馬総統に「どんな党派、団体であれ、92年合意の歴史的事実を認めれば、交流できる」と語っていた。12日付読売新聞は、このメッセージは馬総統ではなく、次期総統となることが確実視される蔡氏に語ったものだと分析している。
中国が「一つの国」であったことはない
「台湾が『92年合意』を受け入れない限り、中国との関係において『現状維持』はできない」という習主席の意向に配慮してか、蔡氏は「民進党は、両岸が92年に会談した歴史的事実を否定してはいない」と、トーンを弱めている。
しかし、共産主義政府が台湾を支配したことは一度もなく、台湾は日本の統治下にあったことを除けば、常に独立していたことは歴史的な事実だ。また中国の歴史を見ると、色々な王朝があり、ある民族が支配者になれば、他を弾圧することを繰り返している。中国が「一つの中国」を目指す時は毎回、「大きな弾圧」を伴っていた。共産党一党独裁体制の中国は、台湾とどのような「一つの国」を目指しているのだろうか。
蔡氏は対中政策で「現状維持」を掲げる一方、日米など「理念の近い民主主義国家」との連携強化を目指している。当選後も、中国からの圧力に屈せず、台湾の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に加盟するなど、日米との関係を強化していくことを期待したい。(真)
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