歴史を20年後退させた慰安婦問題の日韓合意 安倍首相は真実の前に謙虚であれ
2015.12.30
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このほど日韓の外相会談が韓国・ソウルで行われ、いわゆる「慰安婦問題」についての合意がなされた。
合意のポイントは、以下の通り。
日本軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を傷つけたことについて、安倍晋三首相が「心からのおわびと反省」を表明する。
韓国政府が設立する元慰安婦を支援する財団に対して、日本政府が10億円を一括で拠出する。
慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」され、今後、両政府は国連など国際社会でこの問題の非難、批判を控える。
本欄では何度も、この問題で安易な妥協をすべきではないと訴えてきたが、今回の合意は、妥協どころか「卑屈な態度」と言うべき内容であり、「戦後レジームからの脱却」を掲げていた安倍首相による国民への裏切り行為と言える。
世界に通用しない玉虫色の表現
今回の合意は、韓国の慰安婦が「軍の関与」の下にあったことを首相が認め、外交的決着を図った。この点、官房長官が出した「河野談話」よりも国際社会に与えるマイナスのインパクトは強いだろう。
日本政府は、軍の「関与」は認めても、軍による「強制」はなく、韓国側に「性奴隷」の表現を使わないよう求めたというが、「関与」と「強制」のニュアンスの違いなど国際的に通用するはずがなく、諸外国からは軍による強制があったと思われても仕方がない。
現にニューヨークタイムズでは、この問題を「sex slaves(性奴隷)」という表現を用いて報じている。
その内容は、日韓が「日本帝国軍のために性奴隷として働かされた韓国人女性の問題」について合意し、日本が謝罪してお金を支払ったというものだ。
海外メディアの報道を見れば、日本的な「玉虫色の表現」など国際社会には通用しないことは明白だ。
日韓基本条約を反故にした
さらに大きな問題は、韓国政府が設立する慰安婦支援の財団に、日本が10億円を出したことだ。
これまで日本政府は、「日韓基本条約により、戦後賠償問題は解決済み」との立場を取り、民間資金を元手にしたアジア女性基金を通じて、元慰安婦らに「償い金」を支払ってきた。
日本政府は、今回拠出する10億円は「賠償」ではないと言い張るが、韓国政府に「お金を払うからこれで手打ちにしましょう」と持ち掛けて外交的決着を図ったわけであり、もう一度賠償金を払い直したと受け取られかねない。
ゴネ続ける韓国側
今回の外相会談では、在ソウル日本大使館前の慰安婦像撤去や、ユネスコ記憶遺産の慰安婦問題関連資料登録を念頭に置いた国際社会での批判を控えるといった内容も話し合われたが、正式な共同文書にはなっておらず、こうした約束が守られる保証はない。
もちろん、今回の支離滅裂な合意が正式な共同文書として示されることには功罪両面があるが、少なくとも日本側が期待しているように「最終的・不可逆的に解決」されることはないだろう。
今まで韓国は、すでに外交決着しているこの問題を何度も蒸し返して外交カードとして使ってきた。一度約束した内容も、政権が変わったら守られないこともあった。そうした歴史を振り返れば、「今回の合意はきっと守られる」と思うのは、非常におめでたい発想だ。
ゴネ続ける韓国に屈してありもしないことを認めてしまったことは外交的敗北である。ユネスコ記憶遺産で、南京虐殺関連資料が登録されてしまったことも、最終的な決め手は「日本政府が認めていた」点にあったことが発覚している。
たとえ、日本大使館前の慰安婦像が撤去されたとしても、アメリカなど諸外国で民間団体による慰安婦像や記念碑の設置がなされることまでは止められない。さらに中国などが今回の合意を"利用"し、「日本は性奴隷を酷使した悪魔の国」というレッテルを貼って軍拡を正当化することも考えられる。
未来志向の関係は真実の上に成り立つ
何度も話を蒸し返してくる相手を前に、謝罪してお金で解決したいという誘惑に駆られるのは理解できなくもない。だが、嘘に基づく関係は脆いものだ。
今回、安倍首相は「日韓関係が未来志向の新時代に入ることを確信している」と述べたが、嘘に嘘を塗り重ねた合意に基づく関係が未来志向になることはありえず、真の友情は真実の上にしか築かれない。
そのため、「従軍慰安婦などなかった」ことを明らかにしようと、多くの歴史家たちが努力を重ねてきた。
また、大川隆法・幸福の科学総裁は、大東亜戦争時に活躍した軍人たちや、自称・元慰安婦たちの霊言を立て続けに収録・発刊して間違った歴史の見直しを進めた。
こうした流れの中、2014年には朝日新聞が慰安婦報道について一部誤報を認めたり、先の大戦における日本の誇りを取り戻そうという世論も高まったりなど、流れが変わりつつあった。
安倍首相は今回の合意によってこうした人々の努力を水泡に帰し、歴史の針を20年以上前に戻してしまった。
正義を求める声の高まり
安倍首相の歴史認識の歪みは、今年8月に出した「戦後70年談話」ですでに明らかになっていた。
本欄でもそれを指摘してきたが、今回はより"実害"を伴った形で現れてしまった。
日本の輝かしい未来のために尊い命を捧げた英霊たちは、性奴隷を酷使した悪魔のごとき冒涜を受けた今回の合意をどんな思いで見ているのだろうか。
だが、真実を知った心ある人たちは確実に増えている。そうした人たちは、日本と英霊たちの名誉を取り戻すため、「正義」の実現をあきらめることはない。
真実は強く揺るがない。目の前の利益を求め、真実から目を背けようとすれば、いずれ厳しい反作用が来る。安倍首相には、真実の前に謙虚であっていただきたい。
(小川佳世子)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『公開霊言 東條英機、「大東亜戦争の真実」を語る』 大川隆法著
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幸福の科学出版 『神に誓って「従軍慰安婦」は実在したか』 大川隆法著
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