安倍晋三首相は岸田文雄外相に年内に韓国を訪問するように24日、指示した。先月行われた日韓首脳会談の中で、交渉を加速することで合意した、慰安婦問題の妥結を目指す。
背景に産経・加藤氏をめぐる裁判
今回の日本側の動きの背景には、二つの裁判の勝利がある。
一つ目は、朴槿恵大統領の名誉を傷つける記事を書いたとして在宅起訴された、産経新聞の前ソウル支局長・加藤達也氏をめぐる裁判だ。
加藤氏は昨年8月、4月に発生したセウォル号の事故時、朴大統領が7時間姿を消したことを、朝鮮日報のコラムを引用する形で、産経新聞のウェブサイト上で報道していた。
加藤氏は一審で無罪判決を受けたが、韓国の検察当局はこのほど、今後の日韓関係の発展などを理由に、無罪判決に対する控訴を断念。上訴放棄書を裁判所に提出し、加藤氏の無罪が確定した。
日韓請求権協定をめぐる裁判も
二つ目は、日韓請求権協定に関する裁判だ。1965年、この協定の締結により、日本が韓国に5億ドルの経済支援を行うことで、戦後処理は「完全かつ最終的に」解決された。
しかし、戦時中に日本に動員された韓国人の遺族が2009年11月、協定が個人の財産権を保障した韓国憲法に違反するとして提訴していた。
韓国の憲法裁判所は今月23日、「審判の対象ではない」として遺族側の訴えを却下した。
従軍慰安婦は存在しなかったとはっきり言うべき
この二つの判決からは、日本に譲歩し、日韓関係を改善したいという韓国側の思惑が見え隠れする。安倍首相としても、今が慰安婦問題の解決のチャンスと見ているかもしれない。
ただ、気をつけなければいけないのは、会談後、韓国側が慰安婦問題を蒸し返し、日本に対して賠償金を要求することだ。
日韓関係の改善を目指すことは重要だが、岸田外相は、そもそも従軍慰安婦は存在しなかったとはっきり主張すべきだろう。日本は妥協策として、元慰安婦に対する医療・福祉の支援策を検討しているというが、妥協点を探すもなにも、問題が大きくなる前に、真実を主張すべきだった。
歴史戦はいまだ収まる気配がない。
中国が申請していた「南京大虐殺」資料が今年10月、ユネスコ記憶遺産に登録された。韓国は来年3月、中国など6カ国とともに、「従軍慰安婦」資料をユネスコ記憶遺産に申請する予定だ。日本政府は「南京大虐殺」登録の轍を踏んではいけない。(冨野勝寛)
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