岩手県の中2男子生徒のいじめ自殺をきっかけに、改めて、いじめ問題に注目が集まっている。
最近のいじめは犯罪に近いもの、学校の力だけでは解決できないものも多い。それならば、学校側は警察などの外部機関と連携するなどして、子供たちの命を守ることを優先しなければならない。
LINEに投稿された「いじめ動画」
7月に入り、兵庫と愛媛で警察沙汰に発展したいじめ事件が、相次いで報じられた。
同2日、兵庫県・関西学院高校のバレーボール部の男子部員5人が、同じ部の男子生徒の自宅に無断で侵入して部屋を荒らし、その様子を写した動画をLINEに投稿し、別の部員らに公開していたことが報じられた。男子生徒は以前にもLINEでからかわれたことがあったという。
学校側は男子生徒に対するいじめと判断し、加害者の男子部員を無期停学処分とした。無断で他人の住居に侵入することは住居侵入罪にあたるが、それまで学校は警察に本件を通報せず、生徒や保護者への説明も一切なかったという。
また同9日には、中学の同級生の男子生徒(13)に集団で暴行を加えたとして、愛媛県警が暴力行為法違反の疑いで、同県の市立中学2年の女子生徒(14)を逮捕したことが、報じられた。
男女5人が男子生徒に土下座をさせたり、顔に液体を掛けて追い回し、蹴るなどの動画を無料通信アプリのLINE(ライン)のグループ上に投稿し、同級生15人に公開していた。LINEには「自殺するん?」「自殺してもシラネ」など、心ない書き込みもあった。
SNSやメールなどで悪質化するいじめ
近年のいじめには、SNSやメールなどインターネットを介在したものも多く、"面白半分"や"気軽に"行われている現状がある。この「ネットいじめ」には、いくつかの特徴がある。
- 1、顔が見えず、匿名で悪口や誹謗中傷を書き込むケースが多い。いじめる方が加害者意識を持ちにくく、エスカレートしやすい。
- 2、インターネット上に一度流出した個人情報は回収することが難しい。瞬く間に情報が拡散される危険性があり、いじめが拡大しやすい。被害者は不特定多数の他者から攻撃を受ける恐れもあり、心理的なダメージが大きくなる。
- 3、通常のいじめよりも第三者に発覚されづらく、保護者や教師などがいじめの実態を把握しづらい。
警察沙汰にしてでも、学校は子供をいじめから守るべき
冒頭の2つの事例からも、現代のいじめは、一般社会で行えば犯罪と言えるレベルに達していることが分かる。
文部科学省は、犯罪行為として扱うべき事案については、早期に警察に相談し、連携することが重要だと周知している。だが学校側には、いまだに隠蔽体質や相談しづらい雰囲気が壁となって、警察沙汰にすることを敬遠する傾向がある。
岩手のいじめ自殺では、担任の教諭が他の人に相談しなかったため、いじめの発覚と対応が遅れ、生徒の尊い命が失われたと言われている。担任の力量にも個人差があり、いじめには学校が組織として責任を持って対処し、手に負えないものについては積極的に警察などの外部機関と連携して、「いじめは許さない」という姿勢を明確に示すことが必要だ。(真)
【関連サイト】
一般社団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」
【関連書籍】
幸福の科学出版 『教育の法』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=49
【関連記事】
2015年7月9日付本欄 岩手いじめ自殺は止められなかったのか? いまだに残る隠ぺい体質
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2015年2月5日付本欄 「考える道徳」でいじめは減らない 新学習指導要領案を公表
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9166
2014年5月号記事 【最終回】いじめは必ず解決できる