日本、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアの主要7カ国首脳会議(G7サミット)が、ドイツで開催された。世界をリードすべきG7は多くの課題を抱えるが、各国は同じ問題でもスタンスが異なる「同床異夢」の状態だ。

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)では、日米加が不参加なのに対し、英独仏伊が参加。中国の南シナ海の埋め立て問題でも、日米が強い懸念を抱く一方で、地理的に遠い英独仏伊の関心は薄く、むしろ、中国マネーにすり寄って利益を得たい思惑がある。

ウクライナ問題に関するロシアへの対応では、制裁を継続したいアメリカに対し、北方領土問題を抱える日本や地理的に近く利害関係の強い英独仏伊は一定の対話の必要性を説く。

こうしたG7の複雑な状況を伝える、国内マスコミもまた“同床異夢"だ。

今回はG7について報じた8日付の大手6紙を読み比べ、何を「ニュース」として扱い、何を読者に伝えたいのかを、中国問題を軸に読み解いてみる。

もっとも保守色の強い産経新聞は1面などで、安倍晋三首相が中国主導のAIIBに警鐘を鳴らし、「G7は自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値観に立脚し、国際社会の秩序を支えてきた」と堂々と指摘したことに多く紙面を割いている。

この論調に近いのが、読売新聞と日経新聞。読売新聞は1面などで、中国関係の見出しを立てつつ、「安倍首相は、『(AIIBに)参加した国を批判するつもりはない。G7は同じ意思で物事を見て、緊密な連携を取っていく必要がある』と呼びかけた」ことを紹介。日経新聞も1面に続き、3面に「首相、中国けん制」「アジア投資銀参加 欧州勢にクギ」の見出しで、大きく記事を展開している。

対照的なのが、朝日新聞。産経新聞が報じたような安倍首相の"雄姿"はほとんど見られず、1面と3面で、対ロシア、温暖化、ギリシャ支援、ウクライナ紛争に関する動きを中心に紹介。中国問題については、「日本、対中国に関心」という他人事のような見出しを小さく載せる程度で、安倍首相の動きについても、7面で地味に触れる程度だ。

毎日新聞も、「中国成長 世界に『重要』」「G7、影響力維持図る」の見出しで、中国の脅威をほとんど感じさせない紙面。ただ、最近、「しんぶん赤旗」よりも左翼的とささやかれている東京新聞の紙面は、意外に客観的。扱い自体が小さいが、安倍首相が「中国主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に関して公正な運営を求めた」ことなどを紹介している。

新聞やテレビ、ネットなどのさまざまなメディアが伝える情報を取捨選択し、情報の本質を見極める能力「メディア・リテラシー」の必要性が説かれて久しい。だが、日々見聞きするニュースには、意外と受け身になりがちであり、新聞やテレビが伝える主張を"正しい"と認識して自分の考えにしてしまいがちだ。

情報を発信する側の人物や組織の特性を理解しながら日々の情報に接することで、物事や問題の本質が見えてくる。(格)

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