中国湖北省荊州市の長江で起きた大型客船(乗員乗客約450人)の転覆事故は、この70年で最悪の水難事故になる可能性が高まっている。3日夜の時点で、20人以上の死亡が確認され、約420人が行方不明のままだ。

現場では、李克強首相自らが陣頭指揮をとり、事故原因を究明する方針を示した。こうした中、当局が一部の国営メディア以外、事故現場に近づかないようにするなどの情報統制を強めていることが報じられている。

政府が情報統制を行う背景には、事故原因として人災の側面が強まり、問題が長期化すれば、韓国のセウォル号沈没事件と同様に、批判の矛先が政府に向きかねないという懸念がありそうだ。被害者の家族からは「(船長)は乗客を置き去りにして逃げたのではないか」という批判の声も上がっている(2日付毎日新聞電子版)。

鉄道事故で原因を究明する前に車両を埋めた

だが、こうした中国の情報統制は今回に限ったことではない。

2011年に浙江省温州市で起きた鉄道事故では、事故車両は現場の高架下に埋められ、原因の究明は一切行われなかった。事件後には、中国共産党の広報部門が、「新聞などのメディアが脱線事故に関する報道をしてはならない」と命令した。

2013年には、広東省に拠点を置く週刊紙「南方週末」の、民主化を求める内容の社説が、中国共産党を賛美するものに差し替えられるなど、中国では、政府に不都合な言論が弾圧されるのは日常茶飯事だ。

「中国の価値観は変わる」

もちろん、日本の福島第一原発事故による放射線の「見えない恐怖」のように、風評被害が広まることで国民が混乱するような場合は、マスコミに正しい報道を呼びかけることは必要だろう。

しかし、中国政府は、チベットやウイグルなどで人権弾圧に耐えかねた人々が起こしたデモを"暴動"と発表して投獄・虐殺したり、反政府的な人々を"犯罪者"として発表している。情報統制の域を超えた「ねつ造」と言えるが、彼らがそれによって守っているのは、中国共産党の一党独裁体制である。

奇しくも、大川隆法・幸福の科学総裁は4月下旬、福島で行った説法で、情報統制を続ける中国について、こう触れている。

中国の価値観を、共に話し合える同じ土俵の価値観に変えれば、中国は変わります。彼らにも言論や出版、報道の自由を与え、人権を与え、同じ土俵で話し合うようにすれば、『何がおかしいか』が分かるようになりますので、これをやろうとしているのです 」( 『天使は見捨てない』 所収)

共産党が独裁体制を維持するために行っている情報統制が、世界の潮流に逆行していることは誰の目にも明らかだろう。逆に、自由を抑圧すればするほど、人々の自由を求める声は大きくなるばかりだ。こうした国は、国際社会のリーダー足りえない。

客船の事故は悲しむべきことだが、こうした出来事を通じて、国際社会は、自国民の「知る権利」に応えるよう、中国政府に圧力をかけていくべきだろう。(冨)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『天使は見捨てない』 大川隆法著

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