日米両政府は21日、環太平洋経済連携協定(TPP)に関する閣僚協議を終了した。米国産牛・豚肉については、大幅に関税を引き下げることで合意に向かうなど、一定の進展はあったものの、主な争点であったコメや自動車分野の合意には至らなかった。

無関税か低関税の米国産コメの輸入量を、日本は5万トンにとどめたいのに対し、米国は約20万トンを求めていた。また、日本製自動車部品の関税も、日本は即時撤廃を求めたのに対し、米国は先送りを主張した。

ただ安倍晋三首相は20日、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに応じ、「TPPに関する日米合意は近い」との認識を示した。また、来週28日に予定されている日米首脳会談については、「TPPが両国にとって極めて有益だという認識を一致させたい」と述べた。

TPP交渉には12カ国が参加しており、日米間の大筋合意がなければ、12カ国全体の合意はさらに遠のく。来年秋の米大統領選を控え、交渉が漂流する事態を避けるためにも、早期妥結を目指したい。

TPPの本質は「中国包囲網」

TPPは、貿易や投資の関税撤廃やルールの共通化を行うことで、アジア太平洋地域に自由貿易圏を構築する構想だ。TPPの対象は関税撤廃だけでなく、サービス、競争政策、知的財産権など広範囲に及ぶ。

実際のところ、TPPの本質は「中国包囲網」だ。TPPは、自由市場の国の間で結ばれる自由度の高い協定であり、中国のような政府主導の統制経済とは相いれない。

ただ、TPP交渉が停滞している間に、中国はアジア地域に対して着々と手を打っている。中国の主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創立メンバーは57カ国となり、東アジア・東南アジアで参加を見送ったのは日本と北朝鮮だけで、台湾は除外された。しかし、AIIBは組織運営や融資審査が不透明な上、「中国経済への集金機関」との指摘もある。

日米は、国内問題に終始するな

もしTPP交渉が決裂すれば、日米は中国の影響力拡大を抑えることができなくなる。だが、日本では、農業や漁業分野、医療分野への打撃を懸念して、反対の動きがある。また、米国でも、TPPが国内経済に悪影響を与えるという意見は強い。

日米のような先進国は、国内問題ばかりに関心を向けていてはならない。日米両国のTPPの合意は、外交上、安全保障上の危機を防ぐために必須だ。TPPを早期に妥結し、日米がリーダーシップを取って中国の脅威を封じ込めるべきだ。(泉)

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