デンマークで、フランスの「シャルリー・エブド」襲撃事件に類似した事件が起きた。首都コペンハーゲンのカフェで14日に行われていた「表現の自由」に関する集会で男が発砲。翌15日にはユダヤ教の礼拝堂を銃撃した。合わせて市民2人が死亡し、警官5人が負傷した。容疑者と見られる男は、15日に駅で発砲したところを警察に射殺された。

「表現の自由」に関する集会には、イスラム教の開祖ムハンマドの風刺漫画で有名な漫画家であるスウェーデン人のラーシュ・ビルクス氏と、駐デンマークフランス大使が参加していた。ビルクス氏は、「自分が標的だった。シャルリー・エブド襲撃事件に誘発されたのだろう」と述べている(15日付毎日新聞電子版)。

事件を受けて、デンマークのトーニングシュミット首相は「表現の自由に対するテロ」だと表明。フランスのオランド大統領をはじめ、ドイツのメルケル首相やイギリスのキャメロン首相なども、テロリストによる「表現の自由」への挑戦だと非難している。

しかし、一連の風刺漫画事件が「表現の自由」対「テロ」と言えるのかどうかは疑問だ。なぜなら、他人の信仰を傷つけ、冒涜することは、「表現の自由」ではないからだ。

標的とされた可能性の高い漫画家のビルクス氏は2007年、スウェーデン紙に、ムハンマドに犬の胴体をつけた風刺画を掲載。これがもとで、「イスラム国」の前身である「イラク・イスラム国」から、殺害に10万ドルの懸賞金をかけられたため、常時スウェーデン警察の警護を受けていた。このビルクス氏の風刺画は、過激派だけでなく、穏健なイスラム教徒からも強い反発を受けていた。

また、今回の事件が起きたデンマークでは、ユランズ・ポズテン紙が2005年、ムハンマドが爆弾の形をしたターバンを頭に巻いた漫画を掲載。現地のイスラム系団体が同紙に対して名誉毀損の訴訟を起こしたほか、イスラム諸国ではデンマーク政府公館の焼き討ちや同国製品の不買運動などにつながった。

もちろん、銃撃や殺人などのテロ行為は許されるものではない。だが、「表現の自由」を理由に、イスラム教徒の信仰を傷つけることは極めて大きな問題だ。もともと、表現の自由は、「信教の自由」から生まれたものだからだ。民間人を巻き込むテロを増やさないためにも、欧米は「表現の自由」を訴えるだけでなく、イスラム教に対する理解と尊重する気持ちを持つべきだ。(晴)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『ムハンマドよ、パリは燃えているか。―表現の自由VS.イスラム的信仰―』 大川隆法著

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幸福の科学出版 『イスラム国"カリフ"バグダディ氏に直撃スピリチュアル・インタビュー』 大川隆法著

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