アメリカで見つかったタイムカプセルの中で最古のものがこのほどボストンで公開され、歴史家の注目を集めている。

タイムカプセルとは、遠い未来へ「現代の一部」を送るための「箱」であり、未来の誰かが見つけてくれることを願って、地中深くに埋められる。

今回発見されたタイムカプセルは、アメリカ建国の父の一人であるサミュエル・アダムズと、イギリス軍の来襲を革命軍に告げた独立運動の英雄ポール・リビアが、1795年にマサチューセッツ州会議事堂の下に埋めたものだ。

タイムカプセルは1855年に一度開けられ、内部の清掃がされ、新しい保存物資が入れられたあと、再度閉じられ、忘れ去られていた。そして2014年12月、漏水工事の際、偶然見つかったのだ。

中には、1652年から1855年の間に発行された銀や銅のコイン、銀の版刷、ジョージ・ワシントンの顔が掘り込まれている銅のメダル、当時の新聞など、様々なものが入っていた。自国の歴史の一部を発見することができたアメリカにとって、これは感慨深い発見と言える。

人は、本の中でしか学んだことのない歴史の一部に触れると、過去の偉人たちの活躍に新たな感謝の念を抱くものだ。その意味において、タイムカプセルは、未来の人々の支えや希望となり得る。

ところで、タイムカプセルでもっとも有名で大胆な試みは、1939年と65年にアメリカのウェスティングハウス社が、ニューヨークのフラッシングメドーズ公園に埋めた2つのタイムカプセルだろう。

このタイムカプセルは、5千年後の西暦6939年まで開けてはいけないとされており、カプセルの材質や形状などは、5千年の風化に耐えられるよう設計されている。内部は、様々な種類の繊維、鉄、プラスチック、植物の種や、当時の芸術を記したマイクロフィルム、さらには、アインシュタインやトーマス・マンなどの著名人のメッセージが入っている。

また、タイムカプセルの位置や見つけ方、内容は、「記録の書」に記述され、出版されている。もっとも、この本がなくなったら、あとは運とツキに任せるしかない。

「記録の書」の冒頭には、以下のような記述がある。

「現代を生きる我々には、未来が現在より不幸で野蛮な世の中となっていることは想像しにくいものです。しかし、文明は栄枯盛衰のサイクルを通ると、歴史は教えてくれます。我々の文明もその例外ではないでしょう。我々がそうであったように、いつか更に素晴らしい文明が、我々の肩の上に乗り、繁栄するはずです。(中略) そのとき、我々の文明の記録が一部でも残っていると考えるのは、我々に喜びを与えてくれます」

もし数千年後の人類に何かを残せるとしたら、人は何を選ぶだろうか。これだけは世界から消えて欲しくないと考えるものは、個人的に重要なモノ、政治思想、科学的な知識、あるいは、世界宗教の教祖が生きていた時代の教えかもしれない。

未来にはもう存在しないかもしれない「現代の一部」を形として残すことには夢があると言える。しかし、諸行無常な世の中には、目に見えない悟りや愛といった普遍的な真理は存在しており、それを学ぶことこそ、人がこの世に生まれてくる理由と言える。その、時とともに変わらない真理を学べば、人は過去にも、未来にもつながりを見出せるのではないだろうか。(中)

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