京都大学霊長類研究所の正高信男教授らはこのほど、チャールズ・ダーウィンが指摘した通り、恐怖が人間の心を活性化し判断力を高めるということが、実験の結果分かったと英科学誌のオンライン版で発表した。

通常、心理学では、恐怖などのネガティブな感情は、人間の判断力を鈍らせるとしている。

今回の実験では、恐怖を感じさせる「蛇」の写真と、安全な「花」の写真を、赤や青、緑のいずれか一色でプリントし、成人108人と子供25人に見せ、その写真が何色であるかを回答するのにかかった時間を計測。「蛇」の写真の色を回答するのにかかる時間が短いことが分かったという。

正高教授はこの結果に対し、「恐怖に心が活性化する機敏な反応は、危険を回避するために必要な適応だろう」と、恐怖を感じさせるものへの反応が早いのは、進化の過程で人間が身に着けたものだと示唆した。さらに、「この研究は、ダーウィンの指摘の再発見にとどまらず、一般の社会生活を営むのが困難な人たちの心理を解明する手がかりになる」と語り、これまで言われてきた心理学ではなく、ダーウィンの主張が正しいという考えを述べた(15日付ハフィントンポスト)。

進化論で有名なダーウィンは、人間が動物から進化した際に、動物であった時に備えていた感情も引き継いだと論じた。それを元に発展したのが「進化心理学」と呼ばれるもので、進化理論を用いて感情などの人間の本性を解明する学問とされている。

進化心理学では、人間の心や行動は脳によって生成されると考える。例えば、「愛すること」をする人が、それをしない他の人間より生きることで有利になる場合、「愛すること」を選ぶ脳を持つ個体は人間全体に広がっていく、と考える。つまり、進化の過程で優位になるから、そうした感情が今も存在している、というのだ。

しかし、もし、今回の実験で「人類は進化の過程で恐怖によって判断力を向上させてきた」とするなら、それは早計だろう。この実験からわかるのは、危険を感じる物を見たときに集中力が増すらしいということであって、それが進化に関わっていたということではない。

そもそも、進化心理学の基礎となった進化論には無理がある。人間の身体は、偶然に進化したと言えるような単純なものではなく、また、猿から人間に進化した場合にはあるはずの中間種も見つかっていない。進化論を完全に証明する証拠はなく、人類の誕生に創造者が関わっているのは明らかだ。

また、「種の存続に必要だから行う」という動機は、人間以外の動物には当てはまるかもしれないが、人間は、生存に有利とはならない行為をあえて行うことがある。

人間は動物とは違い、単なる感情や環境による外圧で動くだけではなく、自ら理想を描き、それを具体化する力を持っている。死ねば動かなくなってしまう肉体の進化ではなく、理想を実現する力をどのように伸ばすかという魂の進化の方が、より重要であり、研究すべきことなのではないか。(悠/居)

【関連記事】

2014年1月6日付本欄 アメリカの33%は進化論を信じていない 「人間の本能」が無神論・唯物論を拒否?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7191

2013年2月2日付本欄 「忘れられた進化論の父」ウォーレス没後100周年 進化論と霊魂の存在は両立する

http://the-liberty.com/article.php?item_id=5561