多数の中国漁船が9月以降、小笠原諸島付近の海域で、サンゴなどの違法操業を行う件数が急増しているという。海上保安庁は10月24日、中国籍と見られる不審船113隻を確認したことを発表するなど、警戒を強めている。

そうした中、日米ガイドラインの改定に向けた中間報告が、10月上旬に発表された。

現行のガイドラインでは、「平時」「日本有事」「周辺事態」という3類型に分けて、それぞれ自衛隊と米軍の役割を規定しているが、中間報告では、その3類型を削除。新たに、「切れ目のない形」という文言に改め、日米協力が滞りなく行えるように図る。また、「周辺事態」をなくすことで、自衛隊に対する地理的な制約(極東地域を指す)がなくなり、活動領域が広がることになるという。

ガイドラインを変更する背景には、冒頭の不審船を含め、中国の脅威が増しているためだ。現行ガイドラインでは、朝鮮半島の有事を念頭にしたもので、尖閣諸島などの有事には対応が困難であった。ゆえに、昨年、日本は、1997年に策定した現在のガイドラインを改定するようアメリカ側に求めていた。

今回の報告に対して、中国や韓国は強い非難を行っていないものの、日本国内の左翼系の識者が、「軍事の一体化が進み、日本の独立性は失う」などと批判している。だが、実態はむしろ逆だ。今回の日米ガイドラインは、中国の脅威を感じた日本が改定を提案したのであって、この積極さには、アメリカ側も驚いている。しかし、中国への備えを万全にしたい日本にとって、不満が残る改定になる可能性がある。

オーストラリア国立大学戦略防衛研究所上級研究員であるベンジャミン・シュレイア氏が、「日本側は、中国に言及せずに、グローバルな日米同盟の役割を強調する中間報告に対して、明らかに不満を覚えている」(米ナショナル・インタレスト誌23日付電子版)とするように、中国に対するアメリカの配慮が感じられるからだ。

アメリカは、中国との関係を考慮し、同国を名指しすることを避けたのではないか。確かに、グローバルな役割も必要であろう。地理的制約を外すことは、南シナ海のシーレーンを防衛するためには、必要な措置である。だが、目の前の脅威になっている中国に対する日本とアメリカの見方に温度差を感じざるを得ない。

ガイドラインの最終的な完成は年末とされているが、日本にとっては、中国への抑止力を高めるために、「アメリカを巻き込む」大胆な新ガイドラインでありたい。中国への配慮があるならば、見直されてしかるべきだ。(山本慧)

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