イラン海軍のハビボラ・サヤーリ提督がこのほど訪中し、中国人民解放軍の常万全国防部長と会見した。
中国の国営通信・新華社によると、常氏は両軍(特に海軍)の協力関係を強化したいと伝えた。またサヤーリ氏は、中国海軍の艦艇を視察し、両軍共同で海賊対策などに従事したい意図を表明した。
両国の関係強化の背景を理解するには、地政学的な視点で考えると分かりやすい。
イランは核開発問題で欧米から圧力・制裁を受けており、経済的にも軍事的にも中国との関係を深めたい。一方、中国は、イラン最大の石油輸出先であり、中東における影響力の強化を狙っている。同時に、中国が東アジアの覇権を握るために、もっとも大きな障害となるアメリカの注意を中東に引きつけるとともに、アメリカの中東への影響力の低下も狙っている。
地政学に精通するアメリカ人ジャーナリストのロバート・カプラン氏などは、今世紀中にインド洋がエネルギー政策上重要な海域になると指摘しており、中国はこの海域でのプレゼンス(存在感)を強めようと、寄港できる海軍基地を探している。これを裏付けるように、9月には、中国海軍の艦艇2隻が、初めてイランのバンダー・アバス港に寄港した。
しかし、もう少し大きな視点で見ると、いまユーラシア大陸で、大きな経済的・軍事的ブロックができようとしていることが分かる。
中国は最近、ウクライナ問題に付け入り、ロシアとの関係強化にも取り組んでいる。一方、欧米の圧力によって経済的に追い詰められたロシアも、中国との関係を重視せざるを得ない。これを見た一部欧米メディアは、遅ればせながら「イラン・中国・ロシア」の関係強化を警戒し始めている。
しかし、欧米の指導者層の多くは、いまだに自らの近視的な対ロシア政策が、イラン・中国・ロシアの協力という大きな「脅威」を作り出していることに気付いていない。ウクライナ問題におけるロシア一国の動向にこだわるあまり、大局的な判断を誤れば、近い将来、覇権主義を掲げる中国と、核開発を続けるイラン、追い込まれたロシアによって、東アジアと中東に大きな不幸が訪れる可能性がある。
欧米はもう少し冷静かつ巨視的な目でアジア情勢を見つめ、日本も独自の外交政策で、ロシアを中国から引き離す努力をする必要がある。それと同時に、最悪の事態を想定して、日本は独自の防衛力の強化を早急に手がけるべきである。(中)
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