日本とASEAN諸国の防衛次官級会合がこのほど、横浜で開催された。この会合では、徳地秀士防衛審議官が安倍晋三首相のメッセージを代読し、日本からODA(政府開発援助)供与、能力構築支援、装備協力などを行う方針が示された。

これは安倍政権の「積極的平和主義」を具体化する試みの一つと言える。

すでに安倍首相は、7月にフィリピンでのアキノ大統領との会談時に巡視艇10隻の供与(ODAの円借款を活用)を表明し、岸田文雄外相はすでに8月に、巡視船に転用できる中古船6隻をODAとして無償で供与することをベトナム政府に伝えていた。

これを踏まえて、今回の会合では、自衛隊が人道支援・災害救助の分野において、フィリピン軍の人材育成に協力することが決まった。能力構築支援とは、自衛隊の人材やノウハウなどを活かし、人道支援・災害救助、地雷・不発弾処理、防衛医学、海上安全保障、国連平和維持活動などの分野で、他国軍の能力を構築することをいう。能力構築支援は、他国への軍事支援の選択肢が少ない日本にとって重要な意味合いを持っている。

安倍政権は、尖閣諸島沖での領海侵犯や、南シナ海でベトナムやフィリピンと衝突する中国の拡張主義に対して、武器輸出三原則の見直しや集団的自衛権の解釈変更などを行い、「積極的平和主義」を前進させてきている。ただ、8事例を念頭に法整備を進める集団的自衛権の行使容認と同じく、アジア諸国と連携を深めるにはまだまだ制限が多い。

ODA大綱には軍への供与禁止規定があるし、能力構築支援においても、非軍事分野が中心となっている。安倍政権は海洋警察のための巡視艇供与など、限界ギリギリの範囲で手を打っている。

6月には有識者懇談会が岸田外相に報告書を出し、これまでODA大綱が禁じてきた軍への支援に関しても、災害救助などの非軍事目的ならば認めるべきという趣旨の提言を行った。今後は、こうした軍へのODA供与が認められる範囲を広げていくべきだ。

また、欧米諸国が行っている「対外援助協力/ Foreign Aid 」の枠組みなども参考になる。「対外援助協力」は人道支援、経済援助、軍事援助などを多角的に構成し、友邦となる国々を支援する仕組みなので、民生分野が中心のODAとは異なり、安全保障分野にまで東南アジア諸国への援助の範囲を広げることができる。

アメリカは今、「世界の警察官」から引いていく流れの中で、「イスラム国」掃討作戦を展開している。この状況下で、もし中国がアジア地域で軍事行動を展開したならば、アメリカがそれを仲裁する可能性は低いのではないか。

集団的自衛権の行使容認は、アメリカ一国に国防を委ねられない切迫した事情が背景にある。日本は、ASEAN諸国と連携して抑止力を高めるべく、その具体策を固めていくことが急務と言える。(遠)

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