ロシア経済への懸念が広がっている。世界銀行の試算によると、今年のロシアのGDP成長率は0.5%になるとし、来年は0.3%まで落ち込む可能性があるとした。
ロシアは、最近の石油価格の下落、人口の減少、国際競争力の低迷、脆弱な個人資産の保護制度、険悪な投資環境など、多くの問題を抱えている。その上、ウクライナ問題における欧米との確執と経済制裁が、状況の悪化に拍車をかけている。
世界銀行によると、地政学的な問題が全て解消された最善の状況でも、来年のGPD成長率はたったの0.9%になるとし、ロシア経済には根本的な問題があることを示唆している。
今のところは、石油の輸出で得た4600億ドルもの外資準備金でしのげるが、欧米の経済制裁でロシアから資本が逃げ出している状態。早急に何らかの打開策を打たなくてはならない。問題は、その打開策の一環として、ロシアが中国に接近していることだ。今年5月には、ロシアは中国と天然ガスの貿易協定を結んでいる。
元ロシア経済開発貿易省のアンドレイ・ネチャエフ氏は、米誌「スレイト・マガジン」(8日付)で、プーチン氏は、ロシア市民を守るという自国の立場を顧みない「欧米の姿勢に非常に失望している」とした。このように、欧米との協調を諦めたロシアが、中国への接近に大きく舵を切る可能性がある。
だが、21世紀前半の国際社会で解決すべき最重要課題は、中国の軍事拡張と覇権主義。それを押しとどめるための中国包囲網の確立には、ロシアの協力が不可欠だ。日本は、悪化している欧米とロシアの間を取り持ち、ロシアの経済支援・協力を通じて、ロシアを中国から引き離さなければいけない。
そのためには、日米欧は「何が正しいか」という眼を持って、この混沌とした世界を見直し、ロシアがどのような形で世界に貢献し、世界の国々が平和裏に繁栄を目指せるかを考えるべきである。(中)
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