日本政府が、太平洋上の2つの海域を新たに日本の「大陸棚」と定めた政令を閣議決定した。9日の会見で菅義偉・官房長官は、「資源開発など日本の国益の増進につながるものだ」と述べた。

大陸棚が延長されたのは、沖ノ鳥島北方の「四国海盆海域」と、沖大東島南方の「沖大東海嶺南方海域」の計17.7万平方キロメートル。政令は10月1日から施行される。

今回の延長は、メタンハイドレートなどの海洋資源の開発とともに、海洋進出を続ける中国へのけん制という意味合いが強い。日本政府は8月、領海の基点となる名前のない離島158の島に名前をつけた。これは、海洋権益を確保し、国際社会に対して、領海や排他的経済水域(EEZ)の管理強化をPRする意味が込められている。

6月から7月にかけて、中国が南シナ海で、ベトナム船と衝突を繰り返し、侵略の意図を隠さない蛮行に及んだことは記憶に新しいが、日本にとっても対岸の火事ではない。

これまで、中国は東シナ海において、日本との間で相互事前通報制度を結び、「科学調査」を実施してきた。同制度は、中国の海洋調査船が日本のEEZ内で調査する際、科学的な調査の場合のみ、2カ月前までに事前に日本に通報する取り決めである。だが、中国が「科学調査」と説明したとしても、その実態は限りなく怪しい。

実際に、中国は西太平洋で、情報収集活動、有人潜水艇による「科学調査」を実施。最近では今年5月に、海洋科学総合調査船「科学号」が沖縄県久米島付近の日本のEEZ内で、熱水鉱床(海底から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿した鉱床)を大規模に調査したと見られている。この際、中国政府は事前通告してきたが、日本政府は認めなかった。しかし、「科学号」は洋上で調査を強行。海上保安庁は巡視船を出して調査の中止を要求したが、同号はこれを無視している。

これ以外にも、中国海軍の艦船が、沖縄を含む南西諸島を通過して、西太平洋上で軍事演習を繰り返すなど「前科」を挙げればきりがない。沖ノ鳥島周辺の海域でも軍事演習を行っており、日本への挑発は常軌を逸している。

ひと昔前、中国の人民解放軍の高官が、アメリカのキーティング太平洋軍司令官に「太平洋を中国とアメリカで二分しよう」と持ちかけた話は有名だ。しかし、いまやその米中による「太平洋二分論」については、国家主席である習近平氏自身が、隠すことなくさまざまな公の場で口にしている。

日本政府並びに日本人は、現在、日本が国家の主権を守れるか否かの瀬戸際に立たされているという危機意識を高め、さまざまな形で国防強化を図らなければいけないことを、強く自覚しなければならない。(飯/格)

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