日本政府は、ODAを利用して巡視船に転用できる中古船6隻をベトナムに供与する。ベトナムを訪問中の岸田文雄外相が、ファム・ビン・ミン副首相兼外相との会談で表明した。2日付各紙が報じた。

ベトナムは日本と同様、中国から領有権での「挑戦」を受けている。中国は5月、南シナ海のベトナム側の排他的経済水域内に、海底の石油の掘削装置を設置し、採掘作業を始めた。中国側はこの掘削装置を守る100隻の船団を組んだが、これに対し、ベトナム側は30隻程度の老朽化した公船で対応。しかし、中国船に追突されたベトナム漁船が沈没するなどした。結局、中国側は7月中旬に掘削施設を撤収したものの、試掘の間、多数のベトナム漁船が、中国船に衝突されて損傷した。

中国の「力」に太刀打ちできないベトナムは、日本の支援を要請しており、今回の中古船の供与についても熱望していた。ちなみに、日本が供与した中古船の内訳は、元漁業監視船2隻と中古マグロ漁船4隻。いずれも500トンクラス以上で、ベトナムは改修して巡視船として使う予定だ。装備品を含めて、総額5億円程度の支援となり、早ければ年内に送られるという。

日本はベトナムに対し、人材教育の面でも支援している。これまで潜水艦を持っていなかったベトナムは、09年にロシアから潜水艦を購入。今年に入ってそのうちの2隻が納入されたが、潜水艦運用のための潜水医学セミナーに日本の海上自衛官が協力し、5日間の授業をしたことを、2日付朝日新聞が報じている。

ベトナムのグエン・フ―・チョン共産党書記長が7月初旬に「人々から戦争勃発の対策を聞かれた。我々は万全の準備を整えておかなければならない」と発言するなど、領有権を守ろうという意志は固い。

しかし、本誌8月号でも報じた通り、ベトナムは中国との経済的な関係が深く、配慮せざるを得ない面がある。2日付読売新聞によると、輸入額の約3割が対中国であり、外国人観光客の4分の1が中国人。今回の衝突後、北部特産の果物ライチの中国への輸出が激減したため、ベトナム政府が自国での消費を促す異例のキャンペーンを張ることになった。こうしたことからベトナムは中国に対する依存を減らす動きを始めており、その中で日本とのつながりを深めようとしているという。

「世界の警察」をやめると宣言したアメリカがアジアから引いていく中で、日本はアジア諸国を守る役割を担うことを期待されている。そうした中で、集団的自衛権を拡大していく必要性も高まっていくだろう。もちろん、アジアを守ることは、日本を守ることにもつながる。(居)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『「集団的自衛権」はなぜ必要なのか』大川隆法著

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