憎しみがまた、新たな憎しみを生んでいる。8日に始まったパレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム教原理主義組織ハマスとの戦闘は1300名を超える死者を出し、3週間が経過した今も収まる気配がない。

今回の軍事行動の直接のきっかけは、6月に起きたイスラエル人少年3人の誘拐殺人事件。イスラエル政府は犯人を、ガザ地区を支配するハマスによるものと断定し、報復を企てた。一方、この事件の後、今度はイスラエルの過激派によって、パレスチナ人少年が同じく誘拐され殺害される事件が起きた。報復に次ぐ報復という悪循環に陥っている。

日本の大手紙や欧米メディアでは、強者イスラエルがガザ地区の民間人を大量虐殺していると非難する論調も多い。だが、ハマスは軍事拠点を病院や学校の近くに置き、住民の犠牲をあえて増やし、ガザ地区の惨状を訴えて国際世論を味方につける狙いがあるという指摘もされている。イスラエルが一方的に悪いと決めつけるのは早計だろう。

こうしたハマスの「人間の盾」作戦に対し、キャノングローバル戦略研究所の宮家邦彦氏は、軍人が最初に学ぶことは「民間人の保護」であるとした上で、「身内の民間人を危険にさらして保護しない軍隊が批判されず『人間の盾』の裏にある目標を攻撃せざるを得ない軍隊が批判される」(31日付産経新聞)と述べ、イスラエルによる民間人攻撃のみを批判する論調に釘を刺した。

では、そのハマスとは一体どのような組織なのか。

ハマスとは、国際的なイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」と関係が深い、打倒イスラエルを掲げる過激派武装組織だ。07年にガザ地区で実権を握ると、福祉や教育、医療活動を通じて民衆の支持を拡大してきた。だがその一方で、イスラエル国内での自爆テロや人口密集地に向けた頻繁なロケット弾攻撃など、同国の民間人を狙った攻撃を繰り返している。

イスラエルの強硬な姿勢は、日常的にこうした脅威にさらされる国内の世論を背景にしたものでもある。イスラエルも自国の領土と国民を守るのに必死ということであり、今回の攻撃に関しても「自衛権の行使」とうたっているのはそのためだ。よって、単純な「イスラエル悪玉論」では捉えられない。

結局、この地域で何度も戦争が繰り返されるのは、両者の間に深い憎しみがあるからだ。

このパレスチナという地域には、ユダヤ教とイスラム教の聖地エルサレムがあり、その領有権をめぐっての両者の根本的な対立があるほか、元々アラブ人が住んでいたところに後からユダヤ人が入植し、イスラエル共和国を建設した経緯がある。

イスラエル側には、戦後イギリスや国連のお墨付きを得て建国したという正当性や、「自分たちの命を狙う者を放置してはおけない」という考えがあり、アラブ側には、「後から入ってきて国を建て、大きな顔をするとは許せない」という考えがある。どちらにも確固とした言い分があり、バランスの取れた見方が必要だ。

とはいえ、テロ行為に訴えるのは論外だ。また、大川隆法・幸福の科学総裁が「キリスト教徒がイスラム教徒を攻撃するのが簡単なのは、イスラム教を悪魔の教えだと思っているからです」(『宗教選択の時代』幸福の科学出版刊に所収)と指摘するように、宗教が寛容さを失ってはならない。この問題の解決は、宗教対立の解消がなされなければ難しい。

大川総裁はまた、キリスト教もイスラム教も一つの神の教えから流れてきたと説いている。この真実に目を向けることが、宗教対立解消のカギとなるだろう。(翼)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『宗教選択の時代』 大川隆法著

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幸福の科学出版 『日本の繁栄は、絶対に揺るがない』 大川隆法著

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