米国が世界最大の経済大国の地位を失う瀬戸際に立っている。

英フィナンシャル・タイムズ紙が、今年にもアメリカと中国の経済規模が逆転するという世界銀行の国際比較プログラム(ICP)の調査を紹介している。これは、多くの経済学者が両国の経済力が逆転する時期と予測していた2019年より5年も早い。

国の経済規模は、基本的に国内総生産(GDP)という数値によって表されるが、このGDP にも二通りの計算法がある。一つは為替を基準としたものであり、もう一つは購買力平価(PPP)を基にした数字である。前者はその名の通り、比較のためにGDP 数値をその時の為替レートによって、単一の貨幣に変換した場合のもの。一方のPPPとは、その国における購買力を考慮に入れたものである。平たく言えば、それぞれの国の貨幣で、同一の商品がいくらで買えるかを示したもので、国家間のGDPを比較する際にはPPPの方がより正確な数値であると言われている。

ICP の調査によると、2011年度の中国のGDPはアメリカの87%。国際通貨基金(IMF)によると、中国は2011年から2014年度にかけて、経済力が24%成長するとしている。これを基に計算すると、米中の経済規模が2014年中に逆転するのだという。

経済力の成長は、海外投資や軍事支出などの直接的な力の源泉になるだけでなく、IMFや世界銀行などの国際機関における影響力といった、間接的な外交力の強化にもつながる。中国は1980年代以降、GDPだけでなく、軍事力のハードパワーと経済・文化面のソフト・パワーを統合した「総合的国力」(Comprehensive National Power・CNP)の増強に努めてきた。それに引き換え、同調査は、日本がコストの上昇と経済成長率の低迷で、2005年との比較で米国や中国に対してさらに遅れを取っていると指摘している。これは、民主主義国であるはずの日本が、国家や国民の繁栄を求める政策を取らず、覇権国家になるために自国民や周辺国を虐げることもいとわない中国に、水を開けられているということだろう。

中国で、貧困層を脱した人々の数は、1981年から2008年の間に6億人にも上ったと言われている。それは喜ばしいことではあるが、中国共産党がその繁栄と富を、今度は周辺国を脅かす方向に使い始めていることを考えると、手放しで喜んでもいられない。また、それほど多くの人々が経済的繁栄を求めているということは、石油や食料、その他の資源の欠乏や、それらを巡った紛争などが起こる可能性もある。

日本は中国に悪を犯させないために、そして多くの人々の繁栄を可能にするために、ここ20年の経済的停滞をもたらした左翼的な「脱成長」の経済政策や国民の勤勉さを損なう過度の福祉政策を反省するべきだ。経済的自由と自立を基にした、もう一段の経済成長をもたらすための気概と知恵を持つべきであろう。(中)

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2011年4月号記事 日中再逆転

http://the-liberty.com/article.php?item_id=1417

2014年4月10日付本欄 米中の「新しい軍事関係」 日本は米中接近に備えよ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7665