尖閣問題、南京事件、靖国参拝などで、日中の主張は大きく食い違う。これらの問題について、中国は世界各国で積極的に自国の主張を報道している。宣伝戦に関する日中の戦力差は一体どのくらいあるのだろうか。

まずは予算面を見てみよう。世界各国の国際放送予算を比較すると、1位が中国で2700億円~6160億円と発表されている(多くの専門家は、本当はもっと多いと見ている)。2位がアメリカの580億円、3位はイギリスの322億円、以下、4位がドイツの280億円、5位が中東の国際メディア、アルジャジーラを擁するカタールで249億円、日本は6位で130億円である。予算で比べると、日本は中国の20分の1以下の予算しかないことが分かる。

次に、テレビの国際放送の規模について比較してみる。中国には海外放送向けに、中国中央テレビ(CCTV)、CNCワールド(国営新華社通信の英語放送)のテレビ2局を持つ。いずれも中国共産党中央宣伝部が指導しているという。CCTVは160カ国地域に報道され、国連公用語の6か国語をカバーする。CNCワールドは海外100カ国地域に日露英の3か国語で報道している。130の海外総支局に600人の特派員を配置している。

一方日本の国際放送は、テレビ局としてNHKワールドを有する。140カ国地域をカバーするものの、言語は英語と日本語のみ、31の海外総支局に特派員はわずか70人と、見劣りする。

このように、予算が潤沢で視聴可能地域が広い中国の国際放送ではあるが、報道の自由が保障されていないことが問題だ。中国の海外駐在記者は、中国共産党中央宣伝部や外務省から週に一回程度で報道方針についての指示を受けているとも言われている。偏った情報だということが不人気の原因になっており、シェア的には香港にある民間衛星放送局であるフェニックステレビの後塵を拝している。

中国当局も、情報統制している自国のメディアが国際的に信頼を得ていないことを十分に認識しているようだ。だから各国で、中国国営とわからない名前の放送局を立ち上げたり、現地の売れっ子キャスターを引き抜くなどの対策を講じている。

さらに中国は報道以外にも、メディア向けや研究者向けのツアーや接待を行い、海外の研究機関に投資もしている。このような中国に、日本が予算規模で対抗するのは困難だろう。

広報外交(パブリック・ディプロマシー)を専門に研究している幸福実現党の服部聖巳氏は、次のように指摘する。「中国の報道の規模は大きいが、言論の自由がない国の発信は世界からあまり信用されていない。むしろ言論の自由や民主主義の価値を持った日本人一人ひとりが、自信をもって日本の良さを世界に向けて語ることが大きな発信力になるだろう」同時に、「中国の報道の量は膨大なので、日本が黙ったままだと中国のプロパガンダが世界の常識になりかねない」と警鐘を鳴らす。

中国の報道には嘘が多く、それゆえに根拠を示せないものが多い。その点、日本は情報の信頼性と優れたコンテンツで勝負できるはずだ。そのためにも、必要な予算と人材をあてがい、中国の誤った情報を否定して正しい情報を発信すべきだ。歴史問題などの中国の浅はかな嘘を一掃することは、難しいことではない。

(HS政経塾 田部雄治)

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