4月1日から消費税が5%から8%に引き上げられた。政府の試算では、これにより5兆円の税収増加が見込めるという。

そもそも今回の消費税増税には「税と社会保障の一体改革」という名目があった。2012年末の衆議院選挙において自民・民主は、増税分をすべて社会保障費の財源にあてる「国民生活の安心のため」の消費税増税というスタンスをとった。そして、安倍首相は昨年10月に消費税増税を正式に発表した際「社会保障にしか使いません」と明言している。

今回の消費税における増収分の詳しい使途を見てみると、約5兆円のうち「社会保障費の充実」に使われるのは1割の5000億円、残りは基礎年金の国庫負担割合引き上げや赤字解消に充てられている。このように、社会保障といっても、その大半は年金や赤字の穴埋めに使われることになる。この日本の公的年金の積立金は、本来なら950兆円なければならないが、2009年の時点で国には150兆円しか残っていなかった。今回の消費増税は政治家や官僚が使い込み、ばらまいた800兆円を補うために行われたと言える。

さらに4月からは、医療費負担や国民年金保険料、厚生年金保険料が上がり、介護サービスなどの負担も一部増加する。その一方で国民年金と厚生年金の支給は4月から0.7%減額となる。多くの国民にとって、「社会保障費が充実する」という実感はないだろう。

仮にこのまま消費税が10%になり、税収が14兆円増えても、社会保障費の不足分は19兆円以上にのぼる。また、早稲田大の原田泰教授の試算では、2060年の時点で消費税は68.5%にならなければ社会保障費を賄えないという。

かつて、橋本龍太郎首相も1997年、「福祉を充実させる」と国民に説明し消費税を増税した。このように、政治家はすでに破綻している社会保障制度を延命させるため、選挙前に「生活の安心のため」という甘い言葉に変換して国民を騙し、税金を搾り取るという行為を繰り返してきた。

消えた年金積立金800兆円の責任を誰も取っていない事実は、もっと追及されるべきだ。また、復興のためと称して増税した「復興予算」を復興に関係ない事業へ転用していた事も記憶に新しい。これ以上、無責任で、国民を騙す政府や政治家に国民の血税を使わせるわけにはいかない。社会保障財源の安定のためには、現在の年金制度やライフスタイルなどについて抜本的な改革が必要である。そうした未来社会の構想にこそ政治家は責任を持つべきである。

(HS政経塾 和田みな)

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2013年12月号記事 「税と社会保障の一体改革」という幻想 (Webバージョン) - 編集長コラム

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2013年10月7日付本欄 【週刊誌注目記事】消費増税と年金カットで「平成の姨捨て山計画」が始まった?

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2012年8月号記事 消費増税 - そもそモグラの前提知識

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