1月の貿易収支(輸出と輸入の差額)が、2兆7900億円の赤字となった。財務省がこのほど発表した。19カ月連続の赤字で、単月の赤字額としては、比較可能な1979年以降で最大だ。

内訳を見ると、輸入額が前年同月比25%と大幅増。一方の輸出額は、前年同月比9.5%と小幅な伸びにとどまった。

この傾向に対し、「貿易立国の基盤が揺らいでいる」といった懸念の声が、政治家・マスコミなどから出ている。安倍政権の「円安で輸出企業を稼がせ、景気を上向かせる」という戦略が誤算に終わったのではないか、という危機感も高まっている。

しかし、貿易赤字の是非は一概に言えない。日本人にとって「貿易赤字」という言葉の印象は悪いが、本来、貿易赤字を警戒するべきなのは、国内消費が脆弱で、雇用も輸出に依存している途上国だ。

さらに、日本の輸出依存度は低い。2012年で13.4%で、世界190カ国・地域の中で150位。日本はもはや貿易赤字そのものを警戒しなければならないような、貿易立国ではない。貿易収支が赤字でも、国内消費の方が好調であれば問題ない。そもそも輸入が多いということは、多くの物を消費しているということでもあり、経済的な豊かさの現れと言える。

この貿易赤字傾向に関して、「日本の経済モデルが、次のステップに入りつつある」という指摘もある。安倍政権以前まで続いた円高の状況を生き残るため、多くの企業は海外進出を進めた。資金と技術を海外に持ち出し、そのリターンで稼ぐ構造へとシフトしていった。

その稼ぎは「所得収支」と言われ、その額は「貿易収支」を上回っている。「所得収支」と「貿易収支」などを合わせた「経常収支」は、貿易赤字が最大になった今もなお黒字だ。

海外企業に資金と技術を提供することで儲ける。そのお金で、海外からも多くの製品を買う。そうした構造が定着すれば、先進国として賢い経済運営と言える。このように、貿易赤字だけを問題視するべきではない。

むしろ問題なのは、燃料費の増加である。原発の停止に伴い、原油や天然ガスなど火力発電の燃料の輸入量が増えたことが、貿易赤字の大きな要因となっている。

この状態の異常さを指摘する声は少ないが、原発の停止による貿易赤字分は、まさに国富の流出でしかない。自己調達できるものを、わざわざお金を払って買っているということは、日本企業や家計はお金を投げ捨てているようなものだ。

経済産業省の試算によると、原発停止による燃料費の増加分は、2013年で3兆8000万円だという。消費税1%あたりの増税で、2兆円の国民負担になることを考えると、巨額の国富が流出している。貿易赤字を騒ぐなら、原発再稼動を主張するべきだ。(光)

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