中国の"第二の人民解放軍"といわれる武装警察について、共産党中央軍事委員会と公安省・中央政法委員会との二重指揮を解消し、中央軍事委員会の指揮下に一元化し、それに伴って武装警察の組織や機構改革、人員の縮小などを進める方針であることが報じられている。同軍事委員会の主席は習近平国家主席が兼任していることから、今回の方針は習主席が軍と武装警察の完全掌握を図ろうとするものであることは明白だ。

既に中国人民解放軍については、現在の7軍区と3艦隊を5つの戦区に指揮統合する機構改革案が明らかになっている。軍閥的要素の強い軍組織に機構改革を推し進めるのはかなりの強権発動であり、そこに武装警察の改革も加わるとなると、習主席への風当たりも強くなる可能性がある。

習主席は、軍を完全掌握することが安定につながると考えているのかもしれないが、実際、こうした権限集中は危険な政治的手法であることは歴史を見れば明らかだ。旧ソ連末期のゴルバチョフ書記長は、ペレストロイカ改革に伴う社会的混乱を抑えるために軍やKGB、保安警察などの指揮権限や権力の集中を強化。しかし最初で最後の大統領に就任した後、党や軍などの不満分子が1991年にクーデターを起こし、ソ連が崩壊した。

習主席については、中国専門家の間で中国の最後の皇帝になるとの観測がある。ソ連のような政権の崩壊を避けたいならば、そうした治安組織の権限集中ではなく、民主化・自由化を進めるべきだろう。このまま軍などの機構改革に踏み込んでいくならば、軍とつながっている地方政府の反発や不満が爆発し、政権の終わりが早まるだけだろう。(弥)

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