政府はこのほど、福島県内の除染で出た土などを保管する中間貯蔵施設の建設について、福島県の双葉・大熊・楢葉の3町長に受け入れを要請した。合計で19平方キロメートルの土地については国有化する方針だ。

現在、除染作業が遅れているのは、中間貯蔵施設のめどが立たず、除染土の仮置き場が確保できないためだという。中間貯蔵施設が建設されれば除染作業が加速化し、福島の復興も進むと期待されている。

しかし、本誌でも再三指摘したように、福島県で行われている除染のほとんどは必要のないものだ。政府は年間の追加被曝線量が1ミリシーベルト以下になるように除染を進めてきたが、この基準は厳しすぎる。

放射線防護学の第一人者である高田純・札幌医大教授は、瞬間の被曝量が100ミリシーベルト以下では、健康被害は認められないと指摘している。また、福島第一原発周辺を調査した国連科学委員会は、「年100ミリシーベルト以下の放射線量では健康被害は出ない」との結果を報告している。

この基準によれば、ほとんどの地域で除染は必要なくなる。これまでにかかった除染費用は2.5兆円と試算されているが、科学的調査に基づいた正しい情報が広まっていれば、この費用は必要ないものだった。また、これから中間貯蔵施設を作るために3町の土地を国有化するというが、施設建設費や土地を買い上げる費用は税金から出る。

さらに問題なのは、中間貯蔵施設建設受け入れ地域の住人の帰宅、復興をさらに困難にしてしまうことだ。

受け入れ要請地域のなかでも、双葉町、大熊町は、年間50ミリシーベルト以上の「帰宅困難区域」に指定されており、長期にわたって居住制限がかかる地域とされている。そのため、住人からは「どうせ帰れないから、国に売るしかない」という声が出ている。

だが、放射線量は徐々に減っていくし、そもそも年間50ミリシーベルト程度では健康被害は出ない。

ふるさとが国に買い取られてしまったら、本当に「帰りたくても帰れない」ことになってしまう。

それもこれも、「放射能はアブナイ」という報道を続けるマスコミに植えつけられた恐怖心からくる。原爆を落とされ、70年は草花が生えないと言われた広島でさえ、半年後には草が生え、1年半後には人口が15万人にまで戻った。

それなら、福島も本当はとっくに復興していなければおかしい。復興が遅れ、問題がこじれているのは、マスコミが放射能の恐怖を不必要にかきたてたからだ。マスコミは科学的根拠に基づいた正しい情報を発信することで、福島の人々に償うべきであるし、政府も必要のない除染はやめて、一日も早く帰宅できるような政治判断をくだすべきだ。(居)

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2013年11月8日付本欄 本当は安全だった福島 規制委「20ミリシーベルト以下なら安全」と発表へ

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2013年5月号記事 反原発にだまされるな 福島は安全だ 今すぐ我が家に帰ろう

http://the-liberty.com/article.php?item_id=5792