NHKの歴史番組に名誉を傷つけられたとして、出演した台湾人ら42人が損害賠償を求めた件で、東京高裁は28日、台湾人女性1人に100万円の慰謝料を支払うようNHKに命じた。

問題となった番組「シリーズ・JAPANデビュー」は、日本の明治期以降の歴史を振り返るもので、2009年に4回放送された。裁判の対象となったのは、日本が台湾を統治した時代を描いた第1回の「アジアの“一等国"」。日本と同時に台湾など海外でも放送され、台湾の出演者から「意図と違う」と声が上がっていた。

今回訴えが認められたのは、番組中、1910年にロンドンで開催された日英博覧会で、日本政府が台湾の先住民族を「人間動物園」として紹介したという部分。番組中で「人間動物園」という言葉が繰り返し使われており、高裁判決は「『人間動物園』は深刻な人種差別的表現。番組の趣旨を知っていれば女性が取材に応じたとは考えられない」としている。

原告の訴えのうち、偏向報道について高裁は「報道に問題がないわけではない」としながらも、「批判的報道も、憲法が保障する表現の自由や報道の自由にてらして十分尊重されるべきだ」とした。

「都合よく編集され、先住民族が侮辱された」という原告の台湾人女性の訴えが認められたのは当然だろう。しかし、このようなNHKの偏向報道は「報道の自由」と認められるのだろうか。

そもそもNHKの報道には、従軍慰安婦など、事実に反して日本を貶める内容が多く、誤った自虐史観を広めてきた責任は厳しく問われるべきだろう。今回の日英博覧会についての報道でも、実際に先住民族を紹介する手配をしたのは日本政府ではなくイギリスの「シンジケート」という企業だとされており、事実に即しているとは言い難い。

11月25日、日本のアニメやファッションなどのソフト事業の海外展開を支援する「クールジャパン機構」が発足した。このクール・ジャパン戦略の一環である、放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)に参加する15の企業にNHKも名を連ねており、2012年には約4600本の番組を海外に配信している。「公共放送」を自称しながら受信料は強制的に徴収するため、海外からNHKは日本の「国営放送」に見えかねない。そのNHKが事実をねじまげた反日的な内容を放送しては国益を著しく損なってしまう。

NHKが偏向報道を改めなければ、せっかくのクールジャパン機構やBEAJも自虐史観を世界に広める片棒を担がされる羽目になる。今回の判決には、国益という視点も必要だったのではないか。(居)

※以前の本欄では「クールジャパン機構」について、一部の表現に誤りがありました。お詫びして訂正致します。

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