来年4月に消費税率が引き上げられるのを前に、大企業の資金の使い道や来年の業績見通しについて、22日付日経新聞が企業の財務担当者を対象とした調査結果を発表した。

調査では、全体の5割超の企業が資金を設備投資に優先的に振り向け、6割が来年の業績に関して強気であることがわかった。また、消費増税による業績への悪影響に関しては、「ある」と「ない」がほぼ半々だった。

一見、明るい見通しで、アベノミクスによる景気回復は、消費増税のマイナス効果を凌駕するような印象を受ける。しかし、これをもって増税後の経済状況を楽観することはできない。

そもそも今回調査の対象となったのは、株式時価総額の大きい企業を中心とした300社で、資金的にも体力のある企業である。これは増税のみならず、厳しい経済環境において言えることだが、大企業は消費の落ち込みに対して、顧客の囲い込みや価格競争で対応しやすい。

また、来年の増税を前に、大企業の対策はすでに始まっている。

たとえば、小売大手のセブンイレブンは同じ地域に店舗を密集させる形で、一気に新規出店を進めている。この手法をとることで、商品の配送コストを低く抑えられる上に、地域での知名度も高まる。さらに、他社の店舗を2つ以上のセブンイレブンで囲むことで、他社を撤退させるというねらいもある。地域の顧客を一気に獲得することで、増税後の需要の落ち込みを乗り切る戦略だ。

また、ドンキホーテはすでに思い切った値下げセールを行っている。企業体力を強みに価格を下げることで、来店するリピート客を増やす戦略をとっている。増税によって消費が減ることを見越して、先に他店から顧客を奪っておくことで収益を維持しようという意図だ。

一方、消費増税の影響を直に受けやすいのは、全企業の99%以上を占める中小企業だ。価格競争で大企業に戦いを挑むのは難しく、生き残りのための条件は厳しくなる。また、大企業と異なり、外需に頼ることも難しいため、より増税の打撃を受けやすくなる。

大企業の創意工夫を否定したり、経済の新陳代謝を否定することはできないが、中小企業を含んだトータルの経済見通しは間違いなく厳しいと言える。

実際に現在においても、大企業の4~6月期の経常利益は前年同期比で49.7%増であり、それだけを見ると景気回復しつつあるという実感を持つ。しかし、一方の中小企業は12.5%減少している。

増税前のかけこみ需要による一時的な景気の回復もあるだろうが、長期的に見て消費増税は日本経済全体を沈み込ませる要因となる。大企業の業績見通しのみで、消費増税の影響を楽観視することはできない。(光)

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