スペインの全国管区裁判所は19日、中国でチベット人虐殺に関与した容疑で、江沢民元国家主席、李鵬元首相ら元中国政府要人5人に逮捕状を出した。21日付各紙が報じている。

スペインの裁判所は国際人権問題にかかわる訴訟に積極的に取り組む傾向があり、国外の事件であっても、ジェノサイドなどの人権侵害について普遍的管轄権を持っている。

この逮捕状の出来事は、2006年にチベット人を支援するスペインの人権団体が「江沢民氏ら5人が、1980~90年代にチベット人に対してジェノサイドや拷問を行った」とする刑事告発を受けてのもの。裁判所は、「5人の政治的・軍事的な責務を考えると、いずれも人権侵害に加担したとみなすべき根拠がある」と、尋問のための出頭を求める十分な証拠があるとし、逮捕状を出した。

裁判所が逮捕状を発行したことで、5人がスペインや同国と犯罪人引き渡し条約を結んでいる国を訪れた場合、逮捕される恐れがある。実際に1998年にチリ軍政時代のピノチェト元大統領がスペインの要請を受けてイギリスで逮捕された例がある。逮捕状が執行される可能性は低いと見られるが、この訴訟を機にチベットの人権問題への国際社会の注目は高まりそうだ。

この判決に対して中国は、外務省の洪磊(こう・らい)副報道局長が20日の定例記者会見で、「チベットの分離・独立主義者は誹謗中傷やデマを広げ中国政府を繰り返し攻撃し、中国と関係諸国との関係を悪化させている」と非難。また、「逮捕状の発行が事実ならば、中国はスペインの関係機関に強い不満と断固反対の意を表明する」と述べた。

ただ、この部分は同省のウェブページに掲載された会見の内容からカットされており、中国国内のメディアも一切報じていない。政府に都合の悪いことは国内で情報遮断を行う中国政府の姿勢が浮き彫りになった。

この度の逮捕状発行には、「人権侵害を許さない」スペインの姿勢が現れている。ただ、チベット人を始め、少数民族に対する中国の人権侵害は、基本的人権という人類が等しく持つべき普遍的価値への挑戦であり国際的な問題である。国際正義に反する中国の人権侵害に対して、国際社会は協力して対処していく必要がある。(飯)

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