フィリピンの台風被害救援のための自衛隊の国際緊急援助部隊が18日、日本を出発し、早ければ22日にもフィリピンに入る。当初50人だった部隊も、小野寺五典防衛相の指示により、1180人に増員。輸送艦おおすみや、ヘリ搭載型護衛艦いせなど艦船3隻が、輸送用ヘリなどを載せて出発する。

援助部隊は、防衛相直轄のフィリピン現地運用調整所と、自衛艦隊司令官の隷下に置かれるフィリピン国際緊急援助統合任務部隊の2部隊に再編成する。

自衛隊はこれまで、伊豆大島を襲った台風26号による行方不明者の捜索にあたっていたが、8日、東京都知事からの撤収要請を受けて活動を終了。最大時で1360人、延べ2万1000人が活動を行った。撤収時には、島民300人以上が集まって、隊員らに手を振り、島の子供たちが「ありがとう」と書いた手作りのメダルを隊員に渡した。

緊急時に活躍する自衛隊だが、これら2つの災害派遣は、政治的かつ軍事的観点から見れば明らかに「海兵隊的な水陸両用作戦能力」が必要なことが分かる。事実、伊豆大島での災害派遣では、上陸に適したホバークラフト型エアークッション艇(LCAC)を使用した。

また、フィリピンへの活動でも、甚大な被害を受けたセブ島などでは港湾施設も破壊され、伊豆大島以上にLCACなどの装備が必要とされる。今回、LCACを搭載する輸送艦おおすみの派遣が決定された理由もそこにあるだろう。

本誌では以前から、日本にも海兵隊的な部隊の創設・強化の必要性を訴えてきた。近年ようやく、西部方面普通科連隊の創設や、水陸両用車の参考品の購入、南西諸島への島嶼防衛力強化、その訓練の強化などが進み始めている。だが、冷戦時代のソ連に対する北海道周辺の防衛強化から、冷戦後、新たに浮上してきた中国の脅威に対応する沖縄周辺の南西諸島防衛の態勢強化が遅れている感は否めない。

もちろん、米軍の海兵隊そのものは、島などを奪われた後に「奪還するための部隊」だが、日本におけるそれは、他国に領土を取らせない態勢をつくるためのものでなければならない。また、軍事的なノウハウの蓄積の必要性は、高度化するIT技術や兵器の能力向上についても及ぶもので、高いレベルの運用が可能となるまでは人員の教育訓練を含め、長い年月が必要だ。

政府は新たな防衛大綱を年末までにまとめる方針だが、長期的な視野に立ち、自主防衛力の機能強化を進め、災害からも、そして、他国の侵略からも、本当に国民を守れる態勢を固めてほしい。(弥)

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