農林水産省が、減反政策の廃止案を自民党に提示したことを、1日付朝日新聞が報じた。廃止案では、各農家がコメの生産量を決められるようになる上、減反に協力する農家への補助金も数年内に廃止する。悪しき農政の象徴とも言える「減反」の廃止が進むことは歓迎するが、安倍政権が成長戦略の一貫として掲げてきた農業規制の改革が、根本から解消されたわけではない。

減反政策とは、コメの生産量を絞って価格を維持する仕組みのこと。これまでは農水省が、生産量の目標を定めてきた。だが、政府は10月23日に、農水省が定めているコメの生産目標を、自治体に任せる案を提示。今回の農水省の案では、生産目標そのものを廃止し、減反に協力する農家への補助金も廃止する予定という。

減反政策によるコメの価格維持の仕組みがあるため、コメのコスト削減は進まず、競争力も高まって来なかった。また、生産性の低い零細農家にも補助金が支給されるため、農地の集約は進まず、その結果、膨大な耕作放棄地が増えた。その意味で、減反の廃止は、農業問題を解消するための一歩になる。

ただ、減反の廃止と引き換えに、新たな補助金が導入されようとしている。

主食用のコメを家畜の餌用のコメに作り変えることを推奨し、補助金を出すというのだ。収穫量の多い農家は、これまでよりも多額の補助金を受け取れるようになる。だがこれでは、補助金の支出先を変えたにすぎず、政府がコメ農家に介入するという前提が大きく変わったわけではない。

そもそも安倍政権は、成長戦略の柱として、株式会社も含め、農業経営への参入の自由化を目指していた。しかし実際には、参入自由化には既存の農業団体などの反発が強く、議論は次第に、周辺の政策へと拡散しつつある。減反の廃止についても、別の補助金を作り出すのであれば、問題が解決したとは言えない。

日本の農業の生産性を上げるには、一刻も早く、政府に依存する体質から抜け出し、大胆な自由化を進める必要がある。大規模化を進めて国際競争力を高め、「稼ぐ農業」を目指すべきである。(晴)

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