水不足に悩む台湾の離島、金門島へ中国福建省が水を供給することに中台の当局が合意した。(3日付各紙)対中融和政策を推進する馬英九総統にとって象徴的な事業となる。

台湾の金門島は中国・厦門市からわずか2.1キロと、その気になれば泳いで渡れるような距離にある。国共内戦では最前線になり、冷戦中の1960年には対岸に配置された中国人民解放軍と激しい砲撃戦を行った。観光地化が進んでいるとはいえ、いまだ軍事拠点でもある島だ。

台湾全体の問題として水事情が決していいとは言えないこともあるが、金門島はそれに輪をかけて深刻だ。読売新聞の記事によれば「使用する水の7割が地下水で、降水量の減少や汲み上げ過ぎにより水位が毎年低下している。また、貯水池は汚染が進んでいる」という。

背に腹は代えられないのかもしれないが、ライフラインを他国に、しかも事実上の敵国に握らせるということがどれだけ恐ろしいことか考えたことはないのだろうか。兵器は油で動くが、兵士は食糧と水で動くのだ。

また、中国の水事情は台湾に比べてはるかに深刻だ。違法操業の工場からの排水が未処理のまま河川に流されている。中国の水道水の半分が汚水とされ、川や湖は化学物質でカラフルに染まっている。水量も貧弱で、世界銀行の予想によると中国の一人当たりの水資源は世界平均の4分の1の量しかなく、水質汚染も深刻で、水を供給する側の中国ではミネラルウォーターが飛ぶように売れる。これらの事実を見ても、中国から水を引くことは自らの首を締めることにしかならない。

馬総統は中国にすり寄りたいのかもしれないが、日本から海水淡水化のプラントを導入するのが正解だろう。逆浸透膜という濾過膜を使う逆浸透法は、コストはかかるが効率にすぐれている。逆浸透膜を多く製造しているのは日本で、世界市場の約7割を占めるという。

日台友好のためにも、台湾の防衛のためにも、中国からの水供給はやるべきではない。馬総統には、正しい外交戦略を持ちつつ、水問題を解決してほしい。(悠)

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