政府は29日、アベノミクスの一環で、老朽マンションの解体・売却への規制緩和に関する方針を固めた。
現行の民法では、共同の所有者や部屋の借り手全員の合意が要るため、老朽マンションを解体し、さら地にして売却することは難しい。マンションの所有者や第三者が建て替えようとしても、結局は断念せざるを得ないケースが多い。結果として、多くの老朽マンションが放置されてきた。これまでに多くの土地やビジネスチャンスを失わせてきた上に、古いマンションは、大地震での倒壊や将来のスラム化が危惧されている。
しかし、今回の法整備が進めば、所有者の8割程度が合意すれば、解体・売却ができるようになる。政府は、同時に住民の引越し代支援など、売却をさらに促す方策も検討しているという。これは震災対策も踏まえた、安倍政権の成長戦略の一つであり、6月に閣議決定された「規制改革実施計画」に盛り込まれたもの。老朽マンション売却が進めば、新住居やオフィスへの建て直しが進む。不動産投資の増加が期待される。(参考:29日付日本経済新聞)
今回の規制緩和は歓迎したいが、建築分野には依然として規制が多い。火災や耐震性、居住環境への配慮が背景だ。しかしながら、建築の経済効果は大きく、オフィスや工場として他の経済活動にも密接に関係する。こうした建築規制は、日本経済のボトルネックとなっている。
厳しすぎる規制により、起きるべき投資が起きず、進むべき事業が進まない。「最も頭のいい人たち(公務員)が、全力で仕事を邪魔してくる」と建築関係者は地団駄を踏む。
建築規制は1991年の「バブル崩壊」における犯人の1人だとも言われている。地価が高くなったことを「バブル」と指摘されたが。当時、建築規制を緩和し、建物を高層化させていれば、土地の実質的な価値も上がったはずだ。土地の実質価値は地価に近づき、あれほどの「バブル」にはならなかった。「バブル崩壊」の主犯は日銀の金融引き締めであるが、建築規制で実体経済が振るわなかったのは事実だ。
現在も、建物の総床面積と、敷地面積の割合である「容積率」が厳しく規制されており、日本では都市の高層化も進まない。例えば、港区の容積率に比べて、ニューヨークマンハッタンの容積率は4倍以上である。平面都市、東京では「空間」という資源の多くが眠ったままだ。
ここを解放すれば建築投資が一気に増え、景気浮揚効果は大きい。都市が今より多くの人口や企業を収容すれば、経済規模はより拡大する。住宅も広くなり、子供を育てる環境も整っていく。
より大胆に建築規制を緩和すれば、多く古い建物や土地が活用される。今までに無かった空間の利用方法や新しい都市の姿も見えてくる。経済活動や生活の「器」である建築が生まれ変われば、日本全体が活性化することは間違いない。(光)
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