米国務省はこのほど、先月末に約3年ぶりに再開したイスラエルとパレスチナ自治政府との中東和平交渉の次の協議が、14日からエルサレムで開かれると発表した。イスラエルとパレスチナ自治政府は、ケリー米国務長官の積極的な仲介により先月末に米ワシントンで交渉の席に就き、向こう9カ月での和平合意妥結を目指すことで合意していた。

和平交渉は、オバマ米大統領の仲介で2010年にも開かれたが、イスラエルによる入植活動にパレスチナ側が反発してとん挫した経緯がある。

交渉が再開されたとはいえ、国境の画定やエルサレムの帰属、パレスチナ領内のユダヤ人入植地の問題など、双方の立場の違いは大きく、和平合意までの道のりは困難だ。

そうした中でアメリカが交渉再開に乗り出した背景には、オバマ政権の危機感があるという見方がある。中東を席巻した「アラブの春」の結果、エジプトで親米のムバラク政権が倒されたのをはじめ、イスラエルの孤立が深まっている。10万人を超える死者を出しているシリアでの内戦や、イランの核開発問題も、イスラエルの安全保障を揺るがしかねない。

一方で、今回の交渉再開の経緯で浮かび上がってくるのは、ケリー国務長官のこの問題への異様とも言える熱の入れようだ。外交の軸足をアジアに移すと明言しているオバマ政権だが、ケリー国務長官は2月の就任からこれまでに6回も中東を訪問。アジアへの外遊は、北朝鮮が戦争の危機を煽った4月に韓中日を訪問した1度だけで、長官がアジアよりも中東を優先しているのは明らかだ。

「親中派」とも目されるケリー長官が、中国や北朝鮮の軍事的脅威についてどれだけの認識を持っているのか不安視されるところだろう。今後もアジアより中東に注力するのであれば、アジア重視をうたうオバマ政権の戦略が空洞化しかねない。

【関連書籍】

幸福の科学出版 『イラン大統領vs.イスラエル首相 中東の核戦争は回避できるのか』 大川隆法著

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2010年11月号記事 パレスチナ交渉の途方もなく遠い道のり

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