「いじめを受けたことがある」「いじめをしたことがある」と答えた小学生が、ともに9割近くにのぼることが、文科省の国立教育政策研究所の調査で分かり、6日付各紙が報じた。被害者と加害者が入れ替わりながら、いじめが日常的なものになっている学校の様子が浮き彫りになった。

この調査は首都圏の小学校13校、中学校6校の児童生徒約4600人を対象に、2010年から12年まで3年間、毎年2回のアンケートで行われたもの。

計6回のアンケートのいずれかの時点で、「仲間外れ、無視、陰口」など暴力を伴わないいじめの被害を受けた経験がある小学生が87%、中学生が71%で、逆に加害者になったことがある小学生も86%、中学生が72%にのぼった。調査によれば、被害者も加害者も、入れ替わっている様子がみられるという。

また、中学生では「ひどくぶつかる・たたく・蹴る」といった暴力を伴ういじめについても調査されたが、被害を受けたことのある生徒が41%で、加害者になった生徒も30%いた。

同研究所は、暴力を伴ういじめを発見した場合、警察への相談も含めた「早期対応」が必要であると提言。暴力を伴わないいじめについては、「教師が気づかないうちに深刻な状況に進行している場合がある」として、「未然防止」するために、学校を安心できる場所だと感じられるようにするべきだと提言している。

しかし、学校が安全な場所でなくなった根本的な原因は、現代の学校教育で、「善悪の価値観を教えない」ため、善悪が混乱していることにある。いじめが日常的な風景であるため、「解決するべき問題」という認識が希薄になり、その結果、いじめをなかったことにする教師も後を絶たないと考えられる。

その意味では、先日成立した「いじめ防止対策基本法」は、いじめ問題の根幹である教師の「いじめ隠し」に触れていない点が不十分だと言える。

さらに根本的には、教師が「いじめは悪であり、犯罪である」ことを自信を持って教えられるように、教育の中に善悪の価値判断をしっかりと入れていくことが、いじめをなくしていく最も早く効果的な道であろう。(晴)

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