滋賀県大津市で2011年に起きたいじめ自殺事件を受けて、21日に成立した「いじめ防止対策推進法」。法案成立の意義といじめ防止の効果について、本誌に連載執筆中のいじめ解決の専門家、井澤一明氏がNHK総合テレビのNEWSWEB(21日23時30分放送分)に生出演して解説した。

井澤氏は、一般財団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」代表。年間数百件の相談を受け、多くのいじめを解決に導いてきた。現在、全国の学校や地方自治体などからの依頼で講演活動をするほか、テレビやラジオにも多数出演している。

この番組は、次のサイトで見ることができる。 http://www3.nhk.or.jp/news/newsweb/

番組での井澤氏の主な発言内容は以下の通り。

  • いじめに特化した法律ができたこと自体は、大きな一歩。日本が国として、いじめを許さないという姿勢を示したことであり、評価できる。
  • (――「この法律でいじめが減るのか」という声については?)

    大津の事件では教師がいじめを放置し、学校は全体としていじめを認知しなかった。今回の法律で、教師はいじめをとめる責務があることを認めた点は評価できる。しかし、とめなかったからといって罰則がないため、何も言われない。罰則があることで初めていじめに対応する教師もいるというのが現実。
  • (――なぜ、罰則が盛り込まれていないのか?)

    「罰則というのは、教育の精神とそぐわない」という考えによるものだと思う。いじめを定義し、「いじめについてはこう対処すべき」という姿勢を示した所で、今回の法律は終わっている気がする。実効力を高めるには、もう一段、深く入る必要があるのでは。
  • (――「児童生徒が重大な被害を受けた時には学校が調査を行う」という内容の条文が入っているが、重大な被害を受けてからでは遅いのでは?)

    その通り。不登校になったり自殺未遂をした状況になってから初めて動くのでは遅い。いじめの場合、3日や1週間あれば子供は不登校になってしまう。早期発見、早期解決の姿勢を先生方に持ってほしい。
  • (――大津の事件で不十分だった、警察などの外部の組織機関との連携に関しても記述されたが?)

    先生方の多くは、「お母さんも、警察沙汰にすると大変ですよ」などと言って、学校の中だけで抑えようとする。骨折したり怪我をさせたりという事件が起きても、「お互いに話し合いで終わらせましょう」ということが多く、被害者が泣き寝入りすることも多い。今でも先生たちは、外部と連携しなければならないということは知っている。それでも実際は、いじめをなくすことができていない。
  • (――この法律を生かして、少しでもいじめを減らしていくには?)

    この法律によって、日本が国として「いじめを絶対に許さないんだ」という姿勢を示したことがすごく大きい。今後、各都道府県や市の教育委員会、現場の先生方が「私達も本当に、いじめをなくしていこう」と思うことに、この法律の大きな意味がある。この法律の精神を生かして、現場で立ち向かっていただきたい。

放送中、番組のツイッターには大量の書き込みが寄せられた。「周りも自分に矛先が向いて欲しくないから見て見ぬ振り。先生も評価があるから見て見ぬ振り」などと学校の隠蔽体質を批判する意見や、「これだけ問題になってるのだから、罰則を設けるべき」「いじめ防止対策推進法、各党あいのりで、やっぱり中途半端な内容じゃないのかなあ」(以上、原文ママ)など、教師に対する罰則を含む、さらなる法整備を求める声が多かった。

井澤氏の言う通り、国レベルでのいじめ対策が、ようやく本格的に始まったというところだろう。いじめ防止法の精神が現場で生かされることを強く望みたい。いじめ隠蔽の罰則を盛り込むなど、より実効性あらしめるための改正も検討すべきだ。(晴)

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2013年6月21日付本欄 「いじめ防止法」成立 いじめ隠蔽に対する学校・教師への罰則が抜けている

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=6201

2012年10月号記事 【番外編】いじめは必ず解決できる 大津のようないじめ事件を二度と起こさないためには

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4752